メラトニン

まとめ:メラトニンは内因性の強力な抗酸化物質、抗炎症物質、オートファジー調節因子として働き、加齢、癌、神経発達疾患、神経変性疾患、ウイルス感染症、肥満、長寿などへの有効性が指摘されています。

メラトニンは主に松果体で合成される神経内分泌ホルモンであり、古典的で強力な抗酸化物質および抗炎症物質です。増加する実験的および臨床的証拠は、ミトコンドリア機能障害を含む酸化/ニトロソ化ストレス状態に対する有益な効果を示しています。(2011, Acuña‐Castroviejo)

メラトニンは松果体だけでなく、動物のミトコンドリア、植物の葉緑体で合成されて、ミトコンドリアや葉緑体で発生する活性酸素の消去において重要な働きを担っています。(2017, Reiter)(2013, Tan)

メラトニンは、加齢、癌、神経変性疾患、ウイルス感染症、肥満などに伴う酸化ストレスなどによるミトコンドリアの損傷を修復するオートファジー調節因子として作用する幅広い障害に対して有益な役割を果たすることが総括されています。(2019, Boga)

メラトニンは、睡眠調節、概日リズムの調節、免疫増強、代謝調節、抗酸化作用、アンチエイジング、抗腫瘍作用など、幅広い生体機能を発揮します。作用機序としては、オートファジーに作用して、細胞死を防ぎ、炎症を軽減し、カルシウムチャネルを遮断することで、神経保護作用を発揮して神経変性疾患への有効性が期待されています。(2020, Luo)

メラトニンが in vitro および in vivo でさまざまな種類の癌を抑制できることを実証されています。抗酸化作用、アポトーシス誘導、細胞増殖阻害、腫瘍の成長と転移の減少、化学療法と放射線療法に伴う副作用の減少、癌治療における薬剤耐性の減少、および従来の抗がん剤治療の補助的作用を持つことが明らかにされています。臨床試験は、メラトニンがすべての従来の治療法に対する効果的な補助薬であることが明らかにされています。(2021, Talib)

がん細胞では、グルコースは主にピルビン酸から乳酸に代謝されます。メラトニンは、ミトコンドリアでピルビン酸からアセチルCoAへの変換を可能にすることで、がん細胞のグルコース代謝を正常な細胞表現型に再プログラムします。また、ミトコンドリア内のアセチル-CoAは、がん細胞の糖代謝を律速するメラトニン合成の律速酵素の補因子として働き、ミトコンドリアでのメラトニンの生成を保証します。(2020, Reiter)

新型コロナウイルス感染症に対して、140以上の科学出版物においてメラトニンの有効性が報告されています。COVID-19疾患の重症度と死亡率に関連するサイトカインストームと多臓器不全を促進します免疫細胞の代謝、ミトコンドリアの損傷、サイトカインストーム、酸化ストレスなどが、内因性の強力な抗酸化物質でメラトニンによって打ち消されることが総括されています。推奨投与量は3mg~600mgで、体重1kg当たり1mgの高用量が勧められています。(2022, Reiter)

新型コロナウイルス感染症に対してのメラトニンの有用性について考察がされています。夜行性のコウモリは強力なウイルス耐性を持ちますが、これはメラトニンのレベルが高いことに起因します。メラトニンは感染関連の酸化ストレスを軽減します。メラトニンは副作用が少なく、安価です。(2020, Shneider)

線維筋痛症患者に対するメラトニン治療についてのレビューで、睡眠の質の改善、痛み、病気への影響などが改善されたことが総括されています。(2020, Hemati)

ME/CFS 患者の酸化ストレスの増加を軽減するための抗酸化サプリメントとしてメラトニン(1mg)と亜鉛(10mg)の投与の有効性が報告されています。(2021, Castro-Marrero)

アルツハーマー病、パーキンソン病、脳血管障害に対してメラトニンの神経保護作用が総括されています。(2018, Alghamdi)

ASD、ADHD、神経発達障害へのメラトニンの有効性が総括されています。(2020, Rzepka-Migut)(2020, Wu)(2019, Esposito)

てんかんの動物モデルではメラトニンの有効性が報告されています(2011, Banach)が、てんかん患者への追加投与では有意な結論が出ていません。(2016, Brigo)

2型糖尿病の候補遺伝子としてメラトニン受容体遺伝子が特定されたこと(2009, Mulder)から、2型糖尿病や肥満とメラトニンの関連が注目されています。(2019, Karamitri)

メラトニンが長寿タンパク質(SIRT1)に働き、長寿を促進することが報告されています。(2015, Ramis)(2002, Reiter)

うつ病への治療効果が期待されている(2011, Hickie)一方で、小規模な症例研究にてメラトニンがうつ病を悪化させるリスクが指摘されています。(1976, Carman)