パーツとは、人が誰でも持っているある特徴を持った人格や性格や心のことで、人はパーツの寄せ集めで人格が構成されていると考えられています。
ある意味、誰もが多重人格であるということです。
多くのパーツはインナーチャイルド(幼いときに傷ついた子供人格)であるとも言えます。
ワトキンス博士の自我状態療法からの流れで、パーツセラピーが現在の心理療法のトレンドのひとつになっています。
その中でもリチャード・C・シュワルツ先生の内的家族システム療法(IFS、Intenal Family Systems)が有名です。
トラウマを抱えたパーツにフォーカスして治療を行うのがトラウマ治療ですが、トラウマを抱えたパーツを守るパーツなどが治療の邪魔をするために、トラウマセラピーが直線的に進まないことが少なくありません。
パーツセラピーでは、トラウマセラピーを行う前提条件として、パーツ間の関係性を扱っていきます。
心理療法の進め方は色々な方法がありますが、このセルフとパーツの文法に従って「治療を組み立て」、「段取りを決めて」、トラウマ治療を進めて行きます。
このトラウマ治療の進め方がIFSの肝で、他のパーツセラピーとの大きな違いです。
また、IFSではセルフという概念を提唱していることも大きな特徴です。
セルフとは、症状に関係したパーツではないもので、人格の根底にはその人の核となる「真の自己」があるという考えです。
このセルフをリーダーとして、パーツをチームとしてまとめていく治療がIFSです。
セルフとしては、神やヒーローのような8つの資質(好奇心、明晰さ、思いやり、穏やか、自信、勇気、創造性、繋がり)、またIFSでのセラピストとしては、存在感、忍耐、粘り強さ、展望、遊び心の5つの資質が提唱されています。
このセルフという概念は、スティーブンギリガンの「自分の中心」、ドロレス・モスケーラのアダルトセルフ、アンドリュー・リードの未来の自己(Future Self)、スキーマ療法の健康的な大人(Healthy Adult)と同じ概念です。
このセルフは宗教の世界では、クエーカー教徒は「内なる光」、仏教徒は「リグパ」(仏心または仏性)、ヒンズー教徒は「アートマン」または「セルフ」、13世紀のドイツの神学者、哲学者、神秘主義者のマイスター・エクハートは「神の種」、スーフィーは「愛する者」「内なる神」と呼んでいます。
自分自身の中に生まれながらに存在するセルフを最大の拠り所(リソース)として、セラピストのセルフとクライアントのセルフの共同作業でセラピーを進めて行きます。