子宮頸がんワクチン問題〜日本

昨年出版された子宮頸がんワクチン問題の内容の一部を抜粋します。

2013年4月1日に子宮頸がんワクチンの小学校6年生から高校1年生までの女子を対象に無料で受けられる定期予防接種が制度化され定期接種が始まりました。しかし厚労省は2013年6月14日に突然、ワクチンの積極的な接種勧奨を一時中断すると発表しました。理由は、持続的な疼痛とワクチン接種との間に因果関係が否定できないからであるとされました。

現在厚労省はこのワクチンを、定期接種ワクチンとして接種可能にしてはいるものの、積極的な勧奨は行っていなません。結果として少女たちの接種率は、2013年の70%から2018年には約1%と減少し、日本での企業の売り上げ予測を壊滅させました。

日本は、他の多くの国と比較しても、早くから国レベルでワクチンの安全性や効能に疑問を呈してきた国です。1993年には、MMR(はしか・おたふく風邪・風しんの三種混合)ワクチンの接種を一時中止としました。これは1989年に導入された後に、おたふく風邪ワクチンの成分による髄膜炎が高率で見受けられたためです。政府はその後数年間、MMRワクチンをそれぞれ単独で接種するよう勧告しました。さらに、政府は1994年、定期接種ワクチンの強制接種を中止し、努力義務としました。

2011年には、国のワクチン政策に関係するもうひとつの出来事がありました。乳幼児4人の死亡事故の報告を受けて、厚労省がファイザー社の髄膜炎・肺炎用ワクチン「プレベナー」とサノフィ社のヘモフィルス・インフルエンザb型用ワクチン「ヒブ」を一時的に中止したことです。その後ワクチンは死亡の原因でないらしいことが証拠づけられ、これらのワクチンは再び導入されています。

再導入されたとはいえ、ことワクチンに関しては、他の多くの国々よりもより慎重であることを日本の歴史は示しています。

2014年2月25日、山谷・中川両議員、共同通信社の福島氏、セインヴァックスの多大な協力のもと、医師や科学者を対象とした非公開の「子宮頸がんワクチンの重篤副反応に関する国際シンポジウム」が日本で開催されました。

ワクチンが障害を引き起こす理由として想定しうる機序を探索し、残留するHPV−DNAがアルミニウムと組み合わさることで、サイトカイン・ストームや腫瘍壊死因子(TNF)の放出等を引き起こし、報告されているような障害や死に至る可能性などを討議しました。日本の研究者であり、前日のイベントのまとめ役でもあった堺春美医師は、日本のHPVワクチンの副反応出現率は約9%であり、また接種後2年以内に妊娠した女性のうち、30%が中絶あるいは流産したと報告しました

リー医師は、HPVワクチンで死亡したとされる少女の病理解剖データを示した後に、心身反応が脳に炎症を引き起こしうると思う者は手を上げてほしいと聴衆に問いかけたが、挙手した者は一人もいませんでした。

池田修一医師はすでに、HPVワクチン接種後の疾患に苦しむ約200人の少女の研究をしていました。他方、医学ジャーナリストの村中璃子医師は『ウェッジ』という雑誌に、池田医師の研究には科学的な不正行為が疑われるという記事を書きました。しかし、池田医師が勤務している信州大学が独自に調査したところ、科学的不正は認められませんでした。その後、池田医師は村中医師と雑誌を名誉毀損で訴えています。〔池田教授の主張は裁判で支持され、雑誌『ウェッジ』は判決に基づく謝罪文とともに記事の訂正を掲載しました〕。

2017年に池田医師とそのチームは、臨床研究の成果を「ヒトパピローマウイルスワクチン接種後に疑われた副反応──ワクチン投与と症状発現との時間的関係」というタイトルの論文として発表しました。ルイーゼ・ブリンツ医師によるデンマークの53症例の研究と同様、これは松本市にある信州大学病院の池田医師のもとに紹介されてきた臨床例から成るものでした。120人の女性患者を対象としたこの画期的な分析は、診断の技術や障害の臨床的エビデンスをきわめて詳細に提示していました。この研究により、ワクチンとワクチン接種後の諸症状との時間的関係が明らかにされました。この研究によると「ほとんどの症例は、複合性局所疼痛症候群、起立不耐性、および/または認知機能障害として説明可能であった」とされます。

2016年7月、日本の被害者たちが国・MSD(メルク)社・グラクソ・スミスクライン(GSK)社を相手どって、HPVワクチン被害に関する集団訴訟を起こしました。119人(今後、増えるかもしれない)の原告団は、被害者1人に対して、1500万円の損害賠償と共に、治療法の開発と治療体制の向上を求められました。日本ではワクチン被害救済制度があり、何人かの被害者は国から何らかの補償をすでに受けている可能性があります。訴訟の主張のひとつに、定期接種化の違法性があります。被害者たちにかかわった科学者や弁護士が2017年に発表した論文は、次のように述べている。今日ある診断学や治療学は、患者の声に耳を傾け、注意深く診察を行うことから造り上げられたものである。きちんとした診察も行わないまま、患者の訴えを心因反応だとか、若い女性にありがちな一般的な現象であると退けるのは無責任なことです。インドと同じく、本書執筆の時点ではこの訴訟の決着はついていません。

日本は、HPVワクチン論争の中心であり続けている。日本での、少女たちの医療的ニーズへの関心、そして市民へのVワクチン接種勧奨の拒否、そのいずれについても、今後の経過を世界中が見守り続けることでしょう。