イベルメクチン

まとめ:イベルメクチンは新型コロナ感染症、後遺症、ワクチン後遺症への有効性が指摘されています。

ノーベル賞を取られた大村智先生の「イベルメクチン 新型コロナ治療の救世主になり得るのか」、リチャード・コシミズ氏の「超・特効薬イベルメクチン」を読みました。

アメリカの有志の救急救命専門医によって結成されたFLCCC(Front Line COVID-19 Critical Care Alliance)が出している治療プロトコルにて、イベルメクチンは新型コロナ感染症、後遺症、ワクチン後遺症に推奨されています。

イベルメクチンはマクロライド系の抗寄生虫薬であり、大村智先生が1974年に発見して、その後1981年からメルク社が動物用の抗寄生虫薬として販売されています。

1987年よりヒトに対して使用が認められ、日本では腸管糞線虫症および疥癬の治療薬として医療保険が適用され医療機関で処方されています。

様々な論文で議論がされていますが、FLCCCのまとめが一目瞭然であり、予防に83%、早期感染に62%、後遺症に41%の有意な改善率があります。

■イベルメクチンの多彩な作用機序

1.新型コロナウイルスはACE2受容体に、スパイクタンパク質が結合することで感染しますが、イベルメクチンはACE2に対して高い親和性を持ちこの結合を阻害します。(2020, Lehrer)

SARS-CoV-2 に対する文献で発表された 60 の薬剤の中で、パリタプレビルとイベルメクチンが、ACE2受容体に最も高い結合親和性を有することを示しました(2021, Oliveira)

2.新型コロナウイルスはACE2受容体にスパイクタンパク質が結合した後に、ヒト細胞膜上に存在するタンパク質分解酵素TMPRSS2を活性化することで、スパイクタンパク質が切断され、ウイルスとヒト細胞の膜融合を促します。イベルメクチンはこのTMPRSS2に高い親和性で結合して阻害します。(2021, Eweas)

3.新型コロナウイルスは感染した後に、一本鎖RNAから巨大タンパク質を作ります。この巨大タンパク質はプロテアーゼでバラバラにされて、それぞれがウイルスの増殖に必要なタンパク質として働きます。イベルメクチンはこのプロテアーゼを阻害します。(2021, Mody)

4.細胞内では細胞核に内外のタンパク質の輸送が常に行われています。新型コロナウイルスは感染後に、ヒトの細胞内で作ったタンパク質を核内に送り込んで、ヒト細胞がインターフェロンを放出する抗ウイルス作用を阻害します。イベルメクチンはこの核内輸送を担うタンパク質に結合して、ウイルス由来のタンパク質の核内への侵入を防ぎます。(2020, Yang)

5.イベルメクチンなどのマクロライド系の抗生物質は、呼吸器系疾患に対する長期投与が確立しており、抗炎症作用を持つことが知られています。

イベルメクチンが炎症性サイトカインの産生を抑制する抗炎症作用が報告されています。(2008, Zhang)

6.イベルメクチンはAMPKを活性化してオートファジーを誘導することが報告されています。(2020, Zhang)

■イベルメクチンの作用機序からの考察

新型コロナウイルス感染症については上記のすべての作用機序が有効ですが、スパイクタンパク質のみが問題となるワクチン後遺症については、作用機序の1と2だけが関係しています。

ME/CFSについては、この作用機序から有効性は期待しにくい。過去にME/CFSに対してイベルメクチンを使用した報告も存在しません。

イベルメクチンの最も知られている作用機序としては、無脊椎動物の神経・筋細胞に存在するグルタミン酸作動性Clチャネルに特異的かつ高い親和性を持ち結合し、Clに対する細胞膜の透過性を上昇させる。これにより、Clが細胞内に流入するため神経細胞や筋細胞の過分極が生じ、寄生虫が麻痺を起こし死滅します。脊椎動物種ではこのイオンチャネル受容体の発現が異なるため、イベルメクチンの毒性が哺乳類で報告されることは基本的にありません。

ウイルスから寄生虫までの幅広い微生物の感染・増殖に有効であり、現時点での科学的な考察でメカニズムが報告されていますが、作用機序は完全には解明されていません。