カルシウム拮抗薬の話

カルシウム拮抗薬(calcium channel blockers)は、高血圧治療の第一選択薬として推奨されています。(2021, Zhu)

■カルシウム拮抗薬による足浮腫、色素沈着

浮腫は、間質液量の増加によって引き起こされる触知可能な腫れとして定義されます。足のむくみは、さまざまな原因が考えられる一般的な問題であり、毛細血管と間隙の間のろ過システムの不均衡の結果です。浮腫の主な原因は、静脈閉塞、毛細血管透過性の増加、ナトリウムと水分の保持による血漿量の増加です。

間質への毛細管液ろ過の 4 つの主な決定要因は、1)毛細血管内圧、2)間質浸透圧、3)毛細血管透過性、4)リンパドレナージです。仰臥位から​​立位への変化に伴い、毛細血管液のろ過は静脈動脈反射によって一定に保たれ、細動脈と静脈肢の両方で姿勢血管収縮を引き起こします。前毛細血管収縮は、カルシウム拮抗薬によって動脈優位に選択的に減少します。細動脈の収縮が減弱した結果、毛細血管内圧が上昇します。毛細血管性高血圧症は、間質への正味の毛細血管液濾過につながります。したがって、重力因子は、カルシウム拮抗薬による足浮腫の形成を促進または促進するのに許容的な役割を果たしていることは明らかです。(2001, Pedrinelli)(2002, Messerli)

カルシウム拮抗薬による足浮腫の頻度は、文献によって差があり、5%から70%です。(2011, Makani)

カルシウム拮抗薬による足浮腫に対して、ループス利尿薬が併用薬で使われている問題が指摘されています。(2019, Vouri)

足浮腫の影響を受けやすい患者では、毛細血管透過性が増加して、赤血球が毛細血管から間質に漏れ出し、カルシウム拮抗薬に長時間さらされると点状出血を引き起こす可能性があります。点状出血は、浮腫領域の色素沈着過剰および変色につながる可能性があります。(2002, Messerli)

■光分布性色素沈着

カルシウム拮抗薬のジルチアゼム(商品名ヘルペッサー)、アムロジピン(商品名アムロジン)による紫外線とカルシウム拮抗薬に反応して出来る光分布性色素沈着の報告があります。この副作用が出る方は、カルシウム拮抗薬を避けることが推奨されています。(2006, Saradi)(2001, Scherschun)(2021, Sheth)

薬剤性色素沈着としてはカルシウム拮抗薬以外にも、ミノサイクリンなどの抗生物質、非ステロイド系抗炎症薬、抗がん剤などがあります。(2019, Garcia)

■癌リスクの問題

がんの既往歴がない 71 歳以上の高血圧患者 750 人を 1988 年から 1992 年まで追跡調査しました。がんの相対リスク(95%信頼区間)アンジオテンシン変換酵素阻害剤(n = 124、6 イベント)およびカルシウム拮抗薬 (n = 202、27 イベント)は、それぞれ 0.73 (0.30 ~ 1.78) および 2.02 (1.16 ~ 3.54) でした。(1996, Pahor)

対象患者は、446 人の癌患者と 1750 人の対照群に基づいています。すべてのがんを合わせた推定相対リスクは、カルシウムチャネル遮断薬と ACE 阻害薬の使用者でそれぞれ 1.27 (95% CI 0.98–1.63) と 0.79 (0.58–1.06) でした。(1997, Jick)

対象患者は、さまざまな部位に癌が発生した 40 歳から 69 歳までの合計 9513 人の患者と、40 歳から 69 歳までの癌が発症していない対照群6492 人でした。カルシウム チャネル遮断薬の使用は、全体的ながんのリスクは相対リスク [RR]、1.1(95% 信頼区間 [CI]、0.9 ~ 1.3)でした。腎臓のがんでは相対リスク [RR]、1.8(95%信頼区間 CI、1.1-2.7)でした。(1998, Rosenberg)