免疫を低下させない生活

新型コロナウイルス関連肺炎に罹らないために 〜 一人一人が気を付けるべきこと,新しい社会の建設に向けて 〜(2020, 福島雅典先生

ウイルス免疫に重要な働きをするリンパ球は,昼は減って夜寝ている間は上昇します。すなわち,好中球とリンパ球の正反するリズムの関係があり,これは副交感神経・交換神経のリズムと関係があります。つまり,交感神経を常時刺激した状態では,リンパ球が減って,免疫機能が低下することになります。例えば,がんの患者さんで交感神経が優位な方は予後が悪いのです。動物実験ですが,交感神経を遮断するとがんの発育がおさまり,交感神経が刺激されると,がんの発育が促進されることが最近わかっています。

つまり,交感神経が優位な状態であることは,免疫機能を抑制してしまいます。ストレスの多い生活態度を改めて,リラックスすることが大事です。生活を正しくしましょう,と言うのはそのことです。

副交感神経と交感神経のリズムを正常化し,交感神経の興奮を抑えて,副交感神経を優位にするには腹式呼吸が効果があります。常に腹式呼吸できるように訓練することが大事です。腹式呼吸の訓練は簡単です.。まず,心を静かに落ち着けて,鼻から息を吐ききること,それにはお腹をどんどんどんどんへこませて, ぺちゃんこにすることです.そして鼻からゆっくり吸う,お腹をへこませてしまえば自然に鼻から空気が入っ てきます。これを 5 回ほど繰り返せば大体慣れてきます。目を閉じて心を鎮めて行えば,なおよろしい。瞑想の心身への良好な効果が最近多くの研究で示されています。

体を暖かく保つことも免疫機能を低下させないために重要です。寝る前にお風呂に入って体を充分温めて, 冷めないうちに寝床に入ることです。室温を自分の最も快適な温度に設定し,湿度 60%に保って乾燥させ ないことも大切です。朝日とともに起きるのが自律神経のリセットには大事なことです。朝日の下で体操するのも効果的です。朝しっかりと果物と野菜を摂ることが大事です。自律神経のリセットによる正しいリズムがホメオスタシス(恒常性)の基本です。現代人の多くはこれがすっかり乱れてしまっているので, まず生活を見直して自分自身の生活リズムと体の快適さを内観(心身の状態を脳で能く感じ取ること)で確 かめることが肝要です。

感染防止についてもっとも重要な事は,一人一人が自分の体をよく内観して体調の変化に早め早めに気 づいて,少しでも疲れや不調がある場合には徹底して休むことです。

 新型コロナウイルスへの感染を防ぐ一歩として,一人一人が免疫力を低下させないよう心掛けましょう。
 以下のことがポイントです。薬は役に立ちません。

まず夜更かしは厳禁です,夜食も厳禁です。8 時前には食事を済ませましょう。そして満腹まで食べない こと。

早寝早起きを実践しましょう。いくら遅くとも 11 時までには,しっかり温まってから寝ましょう。髪の毛は必ず洗ってください。6 時間はぐっすり眠ることが肝要です。一人一人が,これらを徹底することが肝要です。

良質のタンパク質を摂り,また新鮮な野菜や果物もたっぷり摂る。そしてぐっすり眠る。健康は食事・ 運動・睡眠・心のあり方(心態),これに尽きます。また,すべての疾患に共通する養生の基本は大気(新鮮, 清涼な空気),安静,栄養です.その昔,結核は日本の国民病でしたが,今ではほぼ影をひそめました。これは,結核の治療がほぼ完成したからでもありますが,最も重要な要因は日本が豊かになり,人々が栄養を十分に摂れて,生活環境,労働環境も清潔になり,過酷な労働から解放されて充分休養できるようになっ たからです。すなわち,栄養と休養は,国民の結核への抵抗力が強くなった基本的な要因です。