新型コロナとカルシウム、マグネシウム

まとめ:新型コロナ感染症において、宿主防衛的な役割で低カルシウム血症になります。治療的には低カルシウム、高マグネシウムが有効です。

マグネシウムおよびビタミンDを補給して、高カルシウム血症を防ぐためカルシウムサプリメントおよびカルシウムを多く含む食品(バター以外の乳製品干しエビ、がんもどき、煮干し、ししゃも、サクラエビ、木綿豆腐、ワカサギ)を中止します。

低マグネシウム血症が 新型コロナ感染症による転帰不良のバイオマーカーである可能性があることが報告されています。(2020, Lotti)

イランでの134人の新型コロナ感染症の入院及び外来患者にて、49.1%が高血糖、38%が低ナトリウム血症、9.1%が低カリウム血症、32%が低マグネシウム血症でした。(2020, Sarvazad)

新型コロナ感染症では低ナトリウム血症、高ナトリウム血症、低カリウム血症、低カルシウム血症、低塩素血症、血液量過剰症、および血液量減少症が見られることが総括されています。(2021, Pourfridoni)

マグネシウムとカルシウムの細胞流入と流出には同じトランスポーターが関与しています。血清マグネシウムとカルシウムの比率が 0.20 以下である場合、重度の新型コロナ感染症患者の死亡率と強く関連していることが報告されています。(2022, Guerrero-Romero)

低マグネシウム血症は心血管疾患および慢性炎症と逆相関することが知られています。(2021, Fan)

新型コロナ感染症患者の重症度と死亡率に対して血清カルシウムレベルの低下が関係することが、メタアナリシスで報告されています。(2021, Alemzadeh)

低カルシウム血症は、SARS、エボラ、肺炎、および最近の 新型コロナ感染症などのウイルス感染でよくみられる異常です。カルシウム拮抗薬が新型コロナ感染症の死亡率を低下させることなどから、低カルシウム血症は病態ではなく、ウイルス感染細胞のカルシウム代謝を阻害することにより宿主防衛の役割を担うと推論されています。(2021, Crespi)

新型コロナ感染症における低カルシウム血症のメカニズムとして、ビタミン D 欠乏症、代償性 PTH 応答の障害、ウイルスのカルシウム依存性の作用機序、サイトカインおよび UFA の過剰分泌、急性栄養失調、凝固障害、組織カルシウム沈着が考えられます。(2022, Filippo)

新型コロナ感染症患者における重症度と、低カルシウム血症、リンパ球数低値、 D ダイマー高値がそれぞれが相関しているとが指摘されています。(2021, Alemzadeh)

新型コロナ感染症患者で重症度と関係する低カルシウム血症は、血清ビタミンD濃度の低下と相関する報告(2020, Sun)と相関しない報告

(2021, Osman)があります。後者では、血清ビタミンD濃度は、新型コロナ感染症の重症度と無関係であると報告されています。

ビタミンDの補給がインフルエンザと新型コロナウイルスの感染と死亡のリスクを軽減できると総括されています。(2020, Grant)

新型コロナ感染症患者の重症度が血清ナトリウム、カリウム、カルシウムの濃度の低下と関連しているが、血清クロールとは関係していないことが指摘されています。(2021, Lippi)

Ca 2+と Mg 2+ は、細胞内でほとんどの生理学的プロセスでセカンドメッセンジャーとして働き、細胞内で拮抗的な相互作用を持っていることが総括されています。(2017, Tang)(2020, Tang)

マグネシウムは、交感神経後ニューロンおよびアドレナリン作動性神経終末におけるノルエピネフリン放出を阻害します。Mg 2+ は、主に神経終末の N 型 Ca 2+チャネルを遮断し、ノルエピネフリン放出を阻害して、その直接的な血管拡張作用とは無関係に血圧を低下させます。(2020, Tang)

マグネシウムはカルシウムチャネルブロッカーとしても知られており、免疫担当細胞へのカルシウムの流入を阻害します、それにより、核因子κBの活性化、サイトカイン、特にインターロイキン-6の産生、および全身性炎症を防ぎます。(2012, Sugimoto)

新型コロナ感染症に対してマグネシウムの補給の有効性が総括されています。(2020, Tang)(2020, Micke)

新型コロナ後遺症では、マグネシウムおよびビタミンDの欠乏が問題であることが総括されています。(2022, Chambers)

新型コロナ感染症において、低カルシウム血症と低リン血症とリンパ球数の低下は、重症度を示すことが報告されています。(2021, Yang)(2021, Hussein)

ミトコンドリアの Ca 2+蓄積の増加は、ミトコンドリア膜間腔からサイトゾルへのシトクロムcの放出の引き金となり、そこでカスパーゼを活性化し、アポトーシスを引き起こすことが知られています。(1999, Andreyav)