咳嗽の中医治療

中医学で咳嗽は、外感咳嗽と内傷咳嗽に分けられます。外感は急性の乾咳、内傷は慢性の湿咳。ただし陰虚咳嗽は乾咳。

時間・リズム昼>夜外感咳嗽あるいは内傷咳嗽の中で邪実が主
夕方に悪化陰虚
夜>昼陽虚
朝に悪化、痰を排出すると軽減痰湿
明け方の連続咳嗽痰濁
発作性咳嗽百日咳あるいは気道に異物がある
就寝後の連続咳嗽気虚、陽虚
夜に横臥すると悪化して連続咳嗽、喘鳴あり慢性咳嗽が喘証に移行した虚寒
性質乾咳、空咳外感咳嗽、陰虚
湿咳、有痰内傷咳嗽、痰湿・痰熱・痰飲
音声有力、咳の音が有力
無力、咳の音が無力
鼻音風寒
粗濁風熱・風寒が肺気を壅滞する
嗄れ+新病風燥が津液を耗傷
嗄れ+急病気陰が不足
軽微短促風燥、気火
重濁連声痰湿
金属調子気火
咳の誘引飲食甘肥痰湿
疲労、冷え気虚、痰湿、虚寒
ストレス気火(気鬱により生じた火邪)
痰の性質:色白色風、寒、湿
灰色痰濁
黄色痰熱
血色肺を損傷
膿血痰熱が瘀結して肺瘍を形成
稀薄寒、陽虚
粘り
高い粘度痰湿、痰熱
わずか風燥、気火
特に多い痰飲
匂い・味生臭い痰熱
甘い痰湿
塩辛い腎虚

咳嗽とは肺気の通暢を良くして、外邪を排除する意義があるので、収渋薬は原則的に使わない。

外感咳嗽(急性、乾咳)
乾咳:痰の少ない咳風寒咳嗽鼻炎、悪寒>発熱、痰は希薄杏(きょう)蘇散、金沸草散加減
悪寒、発熱、頭痛風熱咳嗽発熱>悪寒、痰稠(たんちょう、粘り気のある痰)、黄稠桑(そう)菊飲加減
温燥咳嗽乾咳少痰、咽乾唇燥桑杏湯加減
涼燥咳嗽乾咳少痰、咽乾唇燥、風寒が表を侵襲して頭痛、悪寒、発熱止嗽(しそう)散加減
火熱咳嗽乾咳痰血、顔面赤色、胸脇疼痛、便秘(火邪が肺を損傷)涼膈(りょうかく)散加減
内傷咳嗽(慢性、湿咳)
湿咳:痰の多い咳痰湿咳嗽多痰、胸悶、食欲不振、四肢乏力、胸脘悶ニ陳湯加減
他臓器の症状痰熱咳嗽痰色は黄稠、胸悶、時に血痰清金化痰湯
肝火肺犯気逆して連続咳嗽、時に血痰黛蛤(だいは)散 合 瀉白散加味
陰虚咳嗽乾咳無痰、口乾舌燥二冬二母湯
+口乾舌燥→養陰潤乾浜防風(北沙参)、百合、生地黄
+咳嗽激しい→潤肺止咳百部、紫苑(しおん)、款冬花(かんとうか、止咳)
気虚咳嗽声低無力、痰は多く、清稀(さらさらで水分量多い)、自汗補肺湯加減
+脾気の虚便溏、食少六君子湯加味
陽虚咳嗽咳嗽の反復発作、痰は薄い、冷え症真武湯加味
+咳嗽激しい乾姜(化痰)、細辛(化飲)、五味子(止咳)

杏蘇散:紫蘇葉(しそよう、辛温解表、蘇葉)、杏仁(止咳平喘薬)、半夏、茯苓前胡(止咳平喘薬)、桔梗、枳穀(きこく、行気、化痰、枳実)、陳皮、甘草、生姜、大棗

金沸草散加減:金沸草(きんふつそう、止咳平喘薬)、前胡、荊芥、細辛、半夏、茯苓、甘草、生姜、大棗

桑菊飲加減:桑葉7.5(そうよう、辛涼解表)、菊花3(辛涼解表)、杏仁6、桔梗6、蘆根6(ろこん、清熱瀉火薬)、連翹4.5、薄荷2.5、甘草2.5

桑杏湯加減:桑葉(そうよう、辛涼解表)、豆鼓(辛涼解表)、山梔子、杏仁、貝母、沙参、梨皮(滋陰)

止嗽散加減:桔梗、荊芥紫苑(しおん、止咳平喘薬)、百部(ひゃくぶ、止咳平喘薬)、白前(びゃくぜん、止咳平喘薬)、陳皮、甘草

涼膈散:大黄、朴硝(ぼくしょう、瀉下薬、芒硝)、甘草、山梔仁(さんしじん、清熱瀉火薬、山梔子)、薄荷葉、黄芩、連翹、竹葉、

ニ陳湯加減:半夏、茯苓、陳皮、生姜、甘草

清金化痰湯:黄芩6、山梔子5、麦門冬9、知母、桔梗6、桑白皮9(そうはくひ、止咳平喘薬)、貝母9、瓜蔞仁9(かろにん、清火熱痰)、橘紅4(きっこう、行気)、茯苓7、甘草3

黛蛤散:青黛(せいたい、解毒)、煅蛤粉(たんごうふん、清火熱痰、海蛤殻)

瀉白散加味:地骨皮、炒桑白皮、炙甘草

二冬二母湯:麦門冬、天門冬、知母、川貝母

補肺湯加減:桑白皮、熟地黄人参、紫苑(しおん、止咳平喘薬)、黄耆、五味子

六君子湯加味:人参、白朮、茯苓、甘草、半夏、陳皮、厚朴、杏仁

真武湯加味:茯苓、芍薬、生姜、白朮、蚫附子

(咳嗽に使う方剤の中で化痰薬は、半夏、陳皮、栝楼仁)