感覚麻痺(麻木)の中医治療
感覚麻痺、感覚異常はワクチン後遺症でよく見られる症状のひとつです。(2023, López-Carriches)(ワクチン副作用の1000の査読付き論文)
中医学では感覚麻痺は麻木(まぼく)と呼ばれます。
1.新久虚実を弁証する
一般には新病は実で、久病は虚が多い。麻木の実証は、風寒湿邪の外観や、内在する湿痰瘀血が経脈気血を阻閉して発病する。ワクチン後遺症では、この湿痰瘀血になります。
一般的には、風湿は上肢を侵犯して麻木不挙となり、寒湿は下肢を侵犯して腿脚木重となり、痰湿では頭昏頭重、胸痞(きょうひ、胸がつまる)腹張、風痰では口舌の麻木が多い。
肢麻、頭暈(自分または外界の景色が旋回して、立っていられない感覚)、耳鳴、目赤は肝風に痰火を挟み上衝する証候である。
両脚が麻木して、局所が灼熱し膨張するものは、湿熱下注に属する。
瘀血の特徴は、麻木する部位が一定している。
湿痰と瘀血が結合すれば、局所的に感覚が無くなり、雨や寒で悪化して、昼軽く夜重い。
2.麻木は一つの証であるが、麻はしびれ感があり、まだ知覚がある。木は局所の知覚が無くなる。麻は軽く、木は重い。麻が進行悪化して木になる。
証候 | 症状 | 方剤 | |
気虚失運 | 虫が這うような手足のしびれ、顔面青白。 | 補中益気湯加減 | 人参、炙甘草、白朮、黄耆、升麻、柴胡、陳皮、当帰 |
血虚不栄 | 手足麻木。顔面淡白。眩暈、心悸、不眠。 | 四物湯 | 熟地黄、白芍、当帰、川芎 |
風湿痺阻 | 慢性の疼痛+麻木。雨の日に悪化する。温めると軽減、寒いと悪化。 | 蠲(けん)痹湯 | 羌活、秦艽、独活、桑枝、当帰、川芎、灸甘草、桂皮、海風藤(祛風湿通絡)、乳香、木香 |
偏風 | 加 防風 | ||
偏寒 | 加 制川烏頭(散寒) | ||
偏湿 | 加 防已、薏苡仁、蒼朮 | ||
本病が上肢 | 加 姜黄(きょうおう、活血化瘀)、威霊仙 | ||
本病が下肢 | 加 牛膝、続断(ぞくだん、助陽)、五加皮(ごかひ、祛風湿)、木爪(もっか、祛風湿) | ||
風寒湿痺 | 合 大、小活絡丹 | 大活絡丹:乳香、没薬、川芎、地竜、羌活、威霊仙、薏苡仁、当帰、紅花、龍血、延胡索、酸棗仁、木香 | |
小活絡丹:全蝎、蜈蚣、地竜、没薬、乳香、薑黄、羌活、紅花、川芎 | |||
温熱痺 | 三妙丸を常用、加 萆薢、地竜、乳香(にゅうこう、活血化瘀)、鶏血藤、海風藤(祛風湿)、姜黄、防已 | 黄柏、蒼朮、牛膝 | |
痺病が長期化、肝腎、気血、陰陽が虚す、麻木酸疼(だるく痛い) | 独活寄生湯加減 | 杜仲、牛膝、桑寄生、当帰、生地黄、芍薬、川芎、茯苓、秦艽、防風、独活、細辛、桂枝 | |
勝駿丸(しょうしゅん) | 牛膝、酸棗仁、防風、当帰、木香、附子、乳香、没薬、羗活、天麻、生地、全蠍、麝香、甘草 | ||
湿熱が長期化して、局部の灼熱、膨張 | 三妙丸 合 四物湯 加 地竜、蚕砂(さんしゃ、祛風湿)、木爪、鶏血藤、僵蚕(ぎょうさん)、防已、続いて虎潜丸 | 黄柏、蒼朮、牛膝 合 熟地黄、白芍、当帰、川芎 | |
虎潜丸:亀板、黄柏、知母、熟地黄、白芍、鎖陽、陳皮、虎骨、乾姜 | |||
湿熱が甚だしい | 人参、黄耆、白朮、大棗、当帰の類の甘温補気薬は禁忌 | ||
痰瘀阻滞 | 慢性、固定。舌に瘀班。 | 双合湯 | 当帰、白芍、川芎、生地黄、白芥子、半夏、陳皮、茯苓、桃仁、紅花、甘草、竹瀝(ちくれき、清火熱痰) |
偏痰 | ニ陳湯 加 蒼朮、白朮、桃仁、紅花 | 半夏、茯苓、陳皮、生姜、甘草 | |
偏瘀 | 四物湯 加 陳皮、茯苓、羗活、紅花、蘇木(そぼく、活血化瘀) | 熟地黄、白芍、当帰、川芎 | |
瘀血によって阻痺 | 身痛逐瘀湯 | 秦艽、香附子、羗活、川芎、甘草、没薬、地竜、五霊脂、桃仁、紅花、牛膝、当帰 | |
+湿熱に偏重 | 蒼朮、黄柏 | ||
+気虚 | 加 黄耆 | ||
+(治療効果を増強) | 加 虫類(全蠍、䗪虫、白花蛇(びゃっかだ、祛風湿通絡))で通絡 | ||
頑痰が結する | 控涎丹(こうぜんたん)加 桂枝、姜黄、全蠍、桃仁、紅花、姜汁 | 甘遂、大戟、白芥子 | |
体虚で重剤に耐えられない | 指迷茯苓丸 | 半夏、茯苓、枳殼、芒硝 | |
口舌の麻木 | 止麻消痰飲 | 半夏、茯苓、天麻、栝楼仁、黄芩、枳殼、陳皮、桔梗、細辛、黄連 | |
+気虚 | 加 人参 | ||
+血虚 | 加 当帰、白芍 | ||
顔面麻木(風痰阻絡) | 牽正散 加 白芷(びゃくし、辛温解表)、防風、釣藤鈎、蜈蚣(ごしょう、平肝熄風) | 白附子、白僵蚕、全蠍 | |
+瘀血 | 合 桃紅四物湯 | 熟地黄、白芍、当帰、川芎、桃仁、紅花 |