陰虚発熱・気虚発熱
陰液とは、身体の正常な液体のことで、津液、血、精を指します。陰虚とは陰液が不足したことです。
■陰虚内熱、気虚発熱、湿温の鑑別
陰虚内熱、陰虚発熱 | 気虚発熱 | 陽虚発熱 | 湿温 |
陰液の不足により、陽が亢進して内熱となる内傷雑病 | 中気下陥で脾気虚弱となり清陽が昇らず、陽気が内鬱して外達できないと、遂には仮熱を引き起こす | 陽虚陰盛では、陽の附く所が無くなり、残火が浮上して、熱症状 | 特定の季節(夏から秋)に起こる、湿邪が原因である外感病 |
体質的な陰虚、熱証が長引いて陰を傷つける、温燥薬の誤用が原因 | 腎陽不足→膀胱の気化↓→下痢、浮腫 | ||
潮熱(午後または夜間の発熱)、衣服を着たがらない | 疲労後の発熱 | 慢性の熱症状、午前中の発熱 | 午後身熱+身重疼痛 |
顔色頬赤 | 顔色萎黄 | 顔色黄暗 | |
盗汗(内熱が津液に迫って外泄)、手足煩熱 | 自汗 | 自汗 | |
口咽乾、乾咳、無痰 | 口渇、熱飲を好む | ||
舌質紅、紅絳舌、舌苔薄、無苔、不膩、裂紋 | 舌質淡白、苔薄白 | 舌質淡白、胖大 | 舌苔白膩(はくじ)、または黄膩(おうじ) |
脈濡数 | 脈細弱緩、大虚(仮熱) | 脈沈細弱、浮大無力 | 脈象細数 |
心煩、断眠、多夢(虚火が上炎して心神を擾動)、大便乾結 | 下痢〜便秘(胃腸の伝動力が弱くなる)、乏尿〜頻尿、納少、息切れ、めまい、脱力感、風邪を引きやすい | 下痢、浮腫、口乾燥、咽痛、歯痛 | |
血便、血尿(気陥で気が摂血できないため) | |||
清骨散 | 補中益気湯去当帰加大棗生姜 | 右帰飲 | 藿朴夏苓湯、三仁湯 |
虚熱:陰陽気血の不足によって起こる発熱のこと。陰虚、陽虚、気虚、血虚によって虚熱は起こる。陰虚が最も多い。
実熱:外邪による熱証。
右帰飲:熟地黄、枸杞子、山茱萸、杜仲、炙甘草、肉桂、附子
陰虚内熱の紅絳舌、無苔、不膩
裂紋
■陰虚発熱の治法:滋陰清熱
清退虚熱の作用が強い | 清骨散 |
滋陰の作用が強い | 青蒿鼈甲湯 |
+陰虚が甚だしい | 玄参、亀板、(何首烏) |
+虚火が上炎して心神を擾動し、心煩、断眠、多夢 | 酸棗仁、柏子仁、夜交藤 |
+盗汗が顕著 | 牡蛎、小麦、糯稲根(じゅとうこん、収渋) |
+心陰が虚して、心悸、手足心熱 | 加減復脈湯、天王補心丹 |
+肝陰が虚して、目眩、易驚、脇肋疼痛 | 帰芍地黄湯 |
+脾胃の陰虚が甚だしい、口渇、飲を欲し、大便燥結 | 沙参(しゃじん)麦門湯、益胃湯 |
+肺陰が虚して、乾咳、痰少なく | 清燥救肺湯、百合固金湯 |
+腎陰が虚して、腰酸膝軟 | 六味地黄丸、知柏地黄丸 |
+発熱に応じて | 銀柴胡、地骨皮、秦艽 |
清骨散:鼈甲、青蒿、知母、炙甘草、地骨皮、銀柴胡、胡黄連、秦艽
青蒿鼈甲湯:鼈甲、青蒿、知母、炙甘草、牡丹皮
加減復脈湯:炙甘草・干地黄・生白芍18 麦門冬15 阿膠・火麻仁(ひまにん、麻子仁ましにん、潤下)9
天王補心丹:竜骨、牡蛎、地黄、酸棗仁、当帰、 天門冬、麦門冬、柏子仁、遠志、丹参、桔梗、党参、茯苓、朱紗
帰芍地黄湯:当帰、白芍、熟地黄、山薬、山茱萸、茯苓、沢瀉、牡丹皮
沙参麦門湯:沙参(浜防風)、麦門冬、玉竹、生甘草、桑葉、白扁豆、天花粉
益胃湯:沙参、麦門冬、玉竹、生甘草、氷糖(ひょうとう、止咳平喘)
清燥救肺湯:桑葉、石膏、麦門冬、火麻仁、阿膠(あきょう、養血滋陰)
百合固金湯:生地黄、熟地黄、麦門冬、玄参、当帰、白芍、百合、桔梗、生甘草
六味地黄丸:地黄、山薬、山茱萸、茯神、牡丹皮、沢瀉
知柏地黄丸:知母、黄柏、地黄、山薬、山茱萸、茯神、牡丹皮、沢瀉
■生薬の陰虚への禁忌と慎重投与
禁忌は、散寒薬(温性なので)、利水滲湿薬(利尿して水湿を除去)、助陽薬(温性)、温化寒痰薬(傷津しやすい)。
慎重投与は、解表薬(特に温性の辛温解表薬)、祛風湿薬(傷陰しやすい)、行気薬(消陰しやすい)。