痰飲の中医治療
痰飲とは、肺、脾、腎の機能が失調して、津液が停積して形成される病証です。「痰飲」は、中医学の病証の中でも、直接的な西洋医学の病名を特にイメージしにくいですが、西洋医学での慢性気管支炎、滲出性胸膜炎、メニエール病(めまい)、胃腸機能失調、心不全に相当します。陰虚の反対です。
飲 | 痰 |
水がサラサラと流れる様 | 水、飲が集まって痰になる |
希薄 | 稠厚(ちゅうこう、濃密で厚い) |
実証 | |||
飲留胃腸 | 飲邪が胃腸に留積 | 脘腹が脹満・痛み、胃に振水音(ポチャポチャ)、腸間ゴロゴロ | 甘逐半夏湯 |
飲と熱が互結 | 腹満、口乾舌燥 | 已椒藶黄丸(いしょうれきおうがん) | |
飲邪が上逆して胸満 | 加 枳実、厚朴 | ||
飲停胸脇 | 気機の昇降の道である胸脇に停飲 | 胸脇の脹満・痛み、特に脇下、呼吸、咳唾、転側時に疼痛激しい | 十棗湯または葶藶(ていれき)大棗瀉肺湯 |
飲犯胸肺 | 飲邪が胸腔に停飲、肺気が上逆して呼吸困難、痰多い、咳き込めば顔面・目に浮腫 | 外寒によるもの | 小青竜湯 |
+陽虚(麻黄が陽気を発散するので禁忌) | 苓甘五味姜辛湯 | ||
+心不全(息切れ、咳が強く起座呼吸、むくみ、胸脇苦満) | 射干(やかん)麻黄湯 | ||
+咳が強く、胸脇苦満、咳・流涎多い | 葶藶(ていれき)大棗瀉肺湯 | ||
飲溢四肢 | 水飲が四肢に留溢(いつ) | 解表化飲 | 小青竜湯 |
虚証 | |||
脾胃陽虚 | 飲が中焦に内停 | 温脾化飲 | 苓桂朮甘湯 |
腎腸虚弱 | 飲証が長引いて脾虚が腎に及び冷え症 | 温腎化飲 | 金匱(きんき)腎気丸 |
胸脇苦満(きょうきょうくまん)とは、左右の肋骨の下、季肋部と呼ばれる部分が固く張り、指を滑り込ませるように入れた時、痛みや不快な圧迫感を感じる症状のことを言います。鬱証や少陽病の症状として現れます。
甘逐半夏湯:甘逐(峻下逐水)、半夏、芍薬、炙甘草
已椒藶黄丸:葶藶子(止咳平喘、行水)、大黄、防已、椒目(利水)
十棗湯:芫花(げんか、峻下逐水)、甘逐、大戟(たいげき、峻下逐水)、大棗
葶藶(ていれき)大棗瀉肺湯:葶藶子(ていれきし、止咳平喘)、大棗
小青竜湯:麻黄、桂枝、半夏、乾姜、細辛、五味子、白芍、炙甘草
苓甘五味姜辛湯:茯苓、甘草、乾姜、細辛、五味子
射干麻黄湯:射干(清熱解毒)、麻黄、生姜、細辛、紫苑(しおん、止咳平喘)、款冬花(かんとうか、止咳平喘)、五味子、大棗、半夏
葶藶大棗瀉肺湯:葶藶子(ていれきし、止咳平喘)、大棗
苓桂朮甘湯:茯苓、桂枝、白朮、炙甘草
金匱(きんき)腎気丸:乾地黄、山薬、山茱萸、沢瀉、茯苓、牡丹皮、桂枝、炮附子