汗証(自汗、盗汗)の中医治療
汗証では、汗の出方によって分類します。自汗は、自動的に時々汗が出て、動くと更に甚だしくなります。盗汗は、睡眠中に汗が出て目覚めると止まります。脱汗は、流れるように汗が出る、または油のように汗が出て、四肢が冷え、呼吸が微であるものです。戦汗は、外寒熱病中に突然悪寒戦慄して汗が出るものです。黄汗は、汗の色が黄色く、衣服を染めるものです。
多汗症の中医治療では、「多汗」という切り口で分類しています。
自汗 | 覚醒時ならいつでも汗が出る | |||
営衛不和 | 悪風、全身酸痛(うずき痛む)、微熱、頭痛 | 営衛の調和 | 桂枝湯 | |
肺脾気虚 | 咳喘が長引き、身体が弱く、食欲不振、顔舌が白い | 益気固表 | 玉屏風散 | |
裏熱蒸迫 | 顔赤舌紅、発熱、口渇、冷飲を好む、大便乾結 | 裏熱の清泄 | 竹葉石膏湯 | |
気虚 | 医学衷中参西録(2) | 滋陰薬+竜骨、牡蠣、山茱萸で収斂 | ||
盗汗 | 睡眠時に汗が出て、目が覚めると汗が止まる | |||
心血不足 | 心悸、少眠、寝ると汗が出る、顔舌が白い、精神的に疲労 | 補血養心 | 柏子仁湯 | |
陰虚火旺 | 不眠、盗汗、痩せ型、骨蒸潮熱、五心煩熱 | 滋陰降火 | 当帰六黄湯 | |
久病、肺腎の陰が虧けたもの | 麦味地黄丸 加 竜骨、牡蛎 | |||
骨蒸潮熱が著しい | 加 知母、地骨皮、亀板、鼈甲 | |||
絶汗 | 危重な病証で、汗が油のように出て、精神が疲労、四肢冷える | 益気固脱、回陽斂(れん)陰 | 生脈散 加 附子 | |
戦汗 | 急性熱病、発熱口渇 | 一般に治療は必要としない | ||
黄汗 | 多くは黄疸の時に見られる。営衛が阻害されたり、湿熱が肝胆に薫蒸(蓄積)して、胆汁が汗として皮膚に出る。熱感、口乾くが飲みたがらず、身体の浮腫、服が黄色になる | 清熱利湿 | 茵陳(いんちん)五苓散、桂枝加黄耆湯 |
営(えい)は、営気のことで、飲食の水穀から化生した精微物質のこと。営気は脈中を運行して、全身を営養して、血液を化生する。
衛気は、体表を保護し外邪の侵入を防御する気のこと。脈外を運行して、防衛作用を持つ気で、陽に属して内外を温養、肌表を護衛、外邪に抵抗、腠理(そうり、皮膚のきめ)を滋養し、汗孔を開閉する機能を持ちます。
営衛(えいえ)は、営気と衛気の総称。どちらも水穀の精が化生したものである。
脈は血管のこと。斂(れん)は、集めるという意味。化生とは、変化、生成という意味。
桂枝湯:桂枝、芍薬、生姜、炙甘草、大棗
玉屏風散:黄耆、防風、白朮
竹葉石膏湯:竹葉、石膏、麦門冬、半夏、人参、炙甘草、糠米(ぬかごめ)
柏子仁湯:柏子仁、半夏、牡蛎、人参、白朮、麻黄、五味子、麦麸(小麦のふすま)
当帰六黄湯:当帰、生地黄、熟地黄、黄連、黄芩、黄柏、黄耆
麦味地黄丸:乾地黄、山茱萸、茯苓、沢瀉、地骨皮、牡丹皮、山薬、五味子、麦門冬
生脈散:人参、麦門冬、五味子
茵陳五苓散:茵陳、沢瀉、茯苓、猪苓、白朮、桂心(けいしん、肉桂)
桂枝加黄耆湯:桂枝湯(桂枝、白芍、炙甘草、大棗、生姜)、黄耆