耳鳴り、難聴の中医治療
耳鳴り、難聴は、中医学では耳鳴(じめい)、耳聾(じろう)と言います。
耳鳴と耳聾は密接に関係しており、いずれも腎が関わっています。
暴聾と久聾を区別する。暴聾は外感や痰熱が原因となり突然起こります。久聾は腎虚が原因でゆっくり発症します。久聾は難治です。
耳鳴、耳聾は、虚実の区別があり、突然起こるものは実で、次第に起こるものは虚です。
耳鳴、耳聾は、腎が本で、風火痰瘀が標であるが、臨床上は互見されることが多い。
実証 | |||
風邪外襲 | 突然の耳鳴り、耳聾、感染症状(発熱・悪風・頭痛・悪寒。咳嗽) | 去風解表 | 清神散 |
肝胆火盛 | 突然の耳鳴り、耳聾、頭痛顔面紅、口苦咽乾、心煩易怒 | 清肝泄熱 | 竜胆瀉肝湯、当帰竜薈(かい)丸 |
痰火鬱結 | 両耳の蝉の耳鳴り、閉塞して聾、胸悶、痰多 | 化痰清火、和胃降逆 | 礞石滾痰丸(もうせきこたん)、二陳湯 加 黄芩、黄連、柴胡、枳穀、大黄、石菖蒲、竹瀝、姜汁 |
瘀阻宗脈 | 塞がったような耳鳴り、耳聾、耳から陳血 | 通竅活血 | 通竅活血湯 |
+痰瘀互結 | 貝母、海藻(清火熱痰)、昆布(清火熱痰) | ||
虚証 | |||
中気不足 | 騒がしい耳鳴りが長引いて耳聾、顔面黄白、倦怠乏力、食欲不振、便溏 | 益気健脾、昇堤中気 | 益気聡明湯、補中益気湯 |
陰血虧損 | 騒々しい耳鳴り、耳聾、顔色艶なし、唇爪が青白い | 気血の補益 | 八珍湯、人参養栄湯 |
肝腎虧損 | 耳鳴り、耳聾、目眩、腰酸、冷え症 | 肝腎の補益 | 耳聾左慈丸、補腎丸 |
清神散:菊花(辛涼解表)、羌活、白僵蚕、木通、川芎、防風、荊芥、木香(行気)、甘草、石菖蒲
竜胆瀉肝湯:竜胆、生地黄、当帰、柴胡、沢瀉、車前子、木通、黄芩、山梔子、甘草
当帰竜薈丸:当帰、竜胆、山梔子、黄連、黄柏、黄芩、芦薈(ろかい、瀉下)、大黄、木香、麝香
礞石滾痰丸:礞石(もうせき、清化熱痰)、大黄、黄芩、沈香(じんこう、行気)、朴硝(ぼくしょう、芒硝、瀉下薬)
二陳湯:半夏、橘紅(きっこう、行気)、茯苓、灸甘草
通竅活血湯:赤芍、川芎、桃仁、紅花、生姜、老忽(ろうくつ)、紅棗(ほんざお、なつめ)、竅香、黄酒
益気聡明湯:黄耆、人参、升麻、葛根、蔓荊子(まんけいし、辛涼解表)、白芍、黄柏、炙甘草
補中益気湯:黄耆、炙甘草、人参、白朮、当帰、陳皮、升麻、柴胡
八珍湯:当帰、生地黄、白芍、人参、白朮、茯苓、川芎、甘草
人参養栄湯:人参、黄耆、当帰、地黄、白朮、茯苓、芍薬、桂皮、陳皮、遠志、五味子、甘草
耳聾左慈丸:熟地黄、山茱萸、山薬、牡丹皮、沢瀉、茯苓、柴胡、磁石(じせき、重鎮安神薬)
補腎丸:巴戟天(はげきてん、助陽薬)、炮姜(ほうきょう、散寒薬)、芍薬、山茱萸、桂心、遠志、細辛、菟絲子(としし、助陽薬)、沢瀉、石斛(せっこく、滋陰)、黄耆、乾地黄、当帰、蛇床子(じゃしょうし、助陽薬)、牡丹皮、肉蓯蓉(にくじゅよう、助陽薬、潤便)、人参、炮附子、甘草、石菖蒲、茯苓、防風、羊腎(ようじん、海狗腎かいくじん、助陽薬)