癌(癌証)の中医治療
■要点
癌証は、正虚の基礎の上に、外部の感受、痰、湿、気、瘀、熱などが積結して発病するので、局部の症状が実であっても、生体は虚である。
正気とは、邪気に対して用いられる言葉で、病邪に対して生体が防衛する機能の総称です。正虚とは、この正気が停滞して病邪に対する防衛能力が減退した状態です。気血津液精のどれが欠乏しても、正虚になります。
実は、気滞、血瘀、痰瘀、湿聚(しつしゅう)、毒火であり、虚は全身の気血陰陽の虚衰である。
標本で言えば、本が正虚で、実は標である。初期の患者でも、正虚の症状が出現する。
■治療
扶正すれば邪の祛除の妨げになる、攻邪すれば正を損傷する場合があり、区分限度が難しい。
陰虚と湿熱、痰濁と瘀血の膠結があり施薬が難しい。弁証論治の原則が重要である。
清熱解毒 | 感染症の合併、癌証の末期 |
化痰散結 | 化痰散結とは、痰凝聚結して造られた腫物に用いる |
活血化瘀 | 気滞瘀血によって造られた腫物や臨床症状として瘀血があるもの |
扶正培(ばい)本 | 脾は後天の本、腎は先天の本であるので、脾腎を論治して、陰陽臓腑気血の失調を調整する |
清熱解毒 | 煩躁高熱、口乾、冷飲を好む、大便乾、小便黄赤 |
金銀花、蒲公英(ほこうえい)、紫花地丁、天葵子(てんきし)、野菊花、連翹、敗醤草(はいしょうそう)、草河車(そうかしゃ)、山豆根(さんずこん)、板藍根、金銭重楼(じゅうろう)、黄連、黄柏、黄芩、山梔子、土茯苓、白花蛇舌草、半枝蓮(はんしれん)、半辺蓮(はんぺんれん)、竜葵(りゅうき)、山慈菇(さんじこ) | |
+熱毒入血 | 出血、瘀班 |
犀角、牡丹皮、柴草、生地黄 | |
+湿滞 | 胸腹痞満(ひまん)、悪心納呆、舌苔黄膩(おうじ) |
藿香、佩蘭、白薏苡、薏苡仁、茯苓、沢瀉、猪苓、通草、滑石 | |
+陰虚 | 唇乾歯燥、舌光無津 |
生地黄、麦門冬、天門冬、玄参、石斛(せっこく)、天花粉、沙参 | |
化痰散結 | 天南星、半夏、貝母、全瓜蓑、山慈菇、白芥子、皀角刺(そうかくし)、海浮石、海蛤殻、牡蛎、猫爪草、青礞石(もうせき)、黄薬子(おうやくし)、海藻、昆布 |
+脾虚 | 党参、黄耆、白朮、茯苓、山薬、太子参 |
+肝鬱 | 香附子、鬱金、青皮、陳皮、仏手(ぶっしゅ)、橘葉(きつよう)、柴胡、川楝子(せんれんし) |
+血瘀 | 丹参、赤芍、桃仁、紅花、水紅花子、劉寄奴(りゅうきど)、生蒲黄、五霊脂、馬鞭草、三稜、夜朮 |
活血化瘀 | 当帰、赤芍、川芎、丹参、桃仁、紅花、蒲黄、五霊脂、三稜、莪朮、水蛭、虻虫(ぼうちゅう)、血竭(けっけつ)、穿山甲(せんざんこう)、䗪虫 |
+気滞 | 鬱金、香附子、延胡索、降香、乳香、没薬 |
+気虚 | 党参、黄耆、太子参 |
+血虚 | 当帰、川芎、赤芍、熟地黄、何首烏、阿膠 |
扶正培本 | |
脾虚気弱 | 全身疲乏、言語低微、気短自汗、食欲不振、便溏 |
+健脾益気 | 人参、党参、黄耆、太子参、蒼朮、白朮、薏苡仁、山薬、扁豆、大棗、甘草 |
血虚 | 顔色白、頭暈、心悸、月経量少 |
+滋陰養血 | 熟地黄、何首烏、当帰、白芍、枸杞子、阿膠、竜眼肉、大棗 |
陰虚 | 咽乾唇燥、口乾喜飲、大便乾結、五心煩熱、舌紅無苔または剥脱、脈沈細数 |
+養陰生津 | 肺陰(天門冬、麦門冬、百合、浜防風(沙参))、胃陰(沙参、麦門冬、石斛、玉竹)、肝陰(熟地黄、何首烏、白芍、枸杞子、女貞子、亀板、鼈甲)、腎陰(熟地黄、枸杞子、桑椹子(そうじんし)、女貞子、亀板、鼈甲)、心陰(竜眼肉、柏子仁、酸棗仁)、脾陰(鼈甲、黄精、胡麻仁) |
陽虚 | 畏寒肢冷、四肢浮腫、泄瀉 |
+温補脾腎 | 脾陽虚(乾姜、肉豆蔲(にくずく)、草果、縮砂(しゅくしゃ)、白蔲仁(びゃくくにん))、腎陽虚(鹿茸(ろくじょう)、巴戟天、仙霊脾、仙芋(せんぼう)、補骨脂、附子、肉桂、菟絲子、肉蓯蓉) |
肺陰は乾咳、胃陰は納呆、肝陰は眩暈・頭痛、腎陰は冷え症、心陰は動悸・不眠が症状として目立ちます。
併用薬 | ||
清熱解毒 | 養陰薬 | 鬱熱は陰虚の上に発生することが多く、化火は陰を虧損する |
化痰散結 | 健脾薬 | 痰の病は脾虚の上に発生する |
活血化瘀 | 行気薬、養血薬 | 気と血の関係は密接であり、気めぐれば血めぐり、気滞れば血瘀する |
血虚 | 健脾益気薬 | 血虚には健脾益気薬を一般的に配合する |