アトピー性皮膚炎の中医治療
アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)は、中医学では四弯風と呼びます。四弯とは、両側の肘窩、膝窩のこと。
木田正博先生の論文の分類が以下です。アトピー性皮膚炎は生活習慣病として対応して食生活の指導を重視します。
脾気虚 | 肌(皮膚と筋肉の間の部分)の湿、皮膚肥厚、浸出液 |
湿熱 | 肌の湿が化熱した結果、熱と発赤 |
陰虚内熱 | 陰液不足から陽気が過剰になり皮膚乾燥と発赤、肥厚はない、寝汗、手掌や足底のほてり、顔のほてり、心煩 |
アトピー基本方加減:金銀花7〜10、連翹7〜10、黄連2〜3、牡丹皮5、白朮5〜7、茯苓7〜10、薏苡仁12〜15、白僵蚕5、地膚子7、栝楼実10、滑石10、炙甘草3、加 蒼朮5、白鮮皮7
益気の人参や黄耆は使わないが、脾虚はほとんどの場合存在するので健脾法は行う。清熱薬により脾胃を損傷することを防ぐためにも健脾法は必要である。
一見乾燥している場合でも、滋陰は行わない。発疹の下層の「肌」には肥厚があり、そこに湿が存在するので。
心肝火旺 | 山梔子、石決明、竹葉、赤芍 |
湿熱流溢(りゅういつ)(黄水:浸出液) | 山梔子、黄芩、車前子、沢瀉 |
湿熱下注 | 萆薢、黄柏、牛膝 |
とびひ、中耳炎、気管支炎などの化膿・痰熱 | 蒲公英(清熱解毒)、野菊花(清熱解毒)、重薬(清熱解毒、魚腥草)、紫根(清熱涼血) |
気滞 | 青皮、枳実、赤芍 |
アレルゲンによる風邪 | 蝉退、白蒺藜、白僵蚕、杭菊花(辛涼解表) |
痒みが強い | 全蠍を短期間 |
久病となると「血瘀」が生じ、皮膚が暗色で苔癬化 | 川芎、丹参、鶏血藤 |
成人で宿食(食滞)がある | 山査子、神曲(消導)、萊菔子、大黄、枳実 |
陰虚内熱の治療では、禁忌は、散寒薬(温性なので)、利水滲湿薬(利尿して水湿を除去)、助陽薬(温性)、温化寒痰薬(傷津しやすい)。
慎重投与は、解表薬(特に温性の辛温解表薬)、祛風湿薬(傷陰しやすい)、行気薬(消陰しやすい)。
アトピー性皮膚炎は、湿熱風毒の邪を皮膚を通して体外に排出する動き、すなわち「透疹」であり、防衛反応だと考えられる。ところが、ステロイド治療はこの防衛反応を無理やり抑え込み、体内に閉じ込めるために、長期で使用すると邪が内攻して肺に入り「哮喘」を起こしたり、あるいは熱毒がこもり「血絡を損傷」してステロイド皮膚炎になります。ステロイドを中止すると、「たが」が外れて、閉じ込められていた邪が爆発してリバウンド現象を起こします。
■教科書によって、様々な分類法があります。
胎熱 | 幼児期 | 三心導赤散加減 |
湿熱 | 児童期 | 除湿胃苓湯加減 |
血燥 | 成人期 | 滋陰除湿湯加減 |
滲出が多い | 加 防已、冬瓜皮(とうがひ、利水)、芋根(ぼうこん、清熱涼血、利水) | |
痒みが強い | 加 烏梢蛇、蝉退、羌活 | |
喘息を併発 | 加 五味子、款冬花(かんとうか、止咳)、枳殼、山茱萸 | |
鼻炎を併発 | 加 辛夷(辛温解表)、白芷(辛温解表)、蔓荊子(まんけいし、辛涼解表) | |
肥厚、苔癬化 | 加 赤石脂(しゃくせきし、収渋)、丹参、鶏血藤、夜交藤 | |
肝鬱血燥 | イライラ、易怒性 | 丹梔逍遥散加減 |
三心導赤散加減:連翹、山梔子、蓮子(れんし、収渋)、玄参、生地黄、茯苓、山薬、車前子、沙参、木通(利水滲湿)
除湿胃苓湯加減:茯苓、黄柏、陳皮、苦参、猪苓、地膚子、白鮮皮、黄耆、薏苡仁、赤小豆(利水滲湿)、蒼耳子(祛風湿)、蝉退
滋陰除湿湯加減:当帰、白芍、柴胡、黄芩、熟地黄、地骨皮、益母草(活血化瘀、利水滲湿)、知母、沢瀉、防風、何首烏(養血)、甘草
丹梔逍遥散加減:牡丹皮、山梔子、柴胡、当帰、芍薬、茯苓、蒼朮(祛風湿)、生地黄、甘草+丹参、白花蛇舌草(清熱解毒)