ワクチン後遺症、コロナ後遺症、ロングコビットに達原飲
「新型コロナウイルス感染症に対する最新知見と有効な漢方薬」(2020, 肖黎)、中国新型コロナウイルス肺炎診療ガイドライン(第8版)にて、感染者の舌像が膩苔であり、冬に発症したことから寒邪と湿邪が原因であると考え、清肺排毒湯、葱鼓湯合玉屏風散加味、甘露消毒丹、達原飲などが推奨されています。
達原飲は、半表半裏の膜原(胸膜と横膈膜の間の部位)に侵入した湿熱疫邪を開達して除きます。
附方として、柴胡達原飲、清脾飲があります。主薬の草果、檳榔子、厚朴で、膜原の邪を開達します。
達原飲 | 柴胡達原飲 | 清脾飲 | ||
湿熱疫邪が膜原に侵入 | 湿熱疫邪が膜原に侵入し痰を生じ、三焦の気機(気の昇降出入)を阻滞 | 痰湿の根源である脾を治す | ||
檳榔子、厚朴 | 行気化湿 | 檳榔子、厚朴 | 厚朴 | |
草果 | 散寒燥湿 | 草果 | 草果 | |
黄芩 | 清熱燥湿 | 黄芩 | ||
知母 | 清熱滋陰 | |||
清透除熱 | 柴胡 | 柴胡 | ||
白芍 | 斂(れん)陰和血 | 白芍 | ||
桔梗、枳穀 | 上焦を開き除湿 | |||
青皮 | 消積下気 | 青皮 | ||
健脾 | 茯苓 | |||
除痰、降逆止吐 | 半夏 | |||
荷葉 | 上中焦を寛胸 |
達原飲で温病を治すべからず。(医学衷中参西録いがくちゅうちゅうさんせいろく、張錫純ちょうしゃくじゅん)
甘露消毒丹合達原飲加減は、新型コロナ感染症で中等度の肺炎において、湿熱疫毒蘊肺証に対して使われます。
甘露消毒丹は、湿熱濁邪が裏に鬱結して、邪熱が三焦で蘊蒸して黄疸が出る場合に使われます。
甘露消毒丹合達原飲加減 | 甘露消毒丹 | 清肺排毒湯(幅広く使われます) | |
滑石、茵陳蒿 | 茵陳蒿(主) | 清熱除湿 | |
黄芩 | 黄芩(主) | 清熱燥湿、清透除熱 | 黄芩、柴胡 |
滑石(主)、木通 | 泄熱利湿 | 沢瀉、猪苓、茯苓 | |
連翹 | 連翹 | 清熱解毒 | |
射干 | 射干 | 清熱解毒、清咽散結 | 射干 |
清熱瀉火 | 石膏 | ||
貝母 | 清咽散結、去痰、止咳 | 半夏、紫苑、冬花 | |
藿香 | 藿香 | 祛暑、行気化湿 | 藿香 |
檳榔子、厚朴、白豆蔲 | 白豆蔲 | 行気化湿 | 枳実、陳皮 |
辛温解表 | 麻黄、桂枝、細辛、生姜 | ||
薄荷 | 薄荷 | 辛涼解表、利咽頭 | |
化痰止咳平喘 | 杏仁 | ||
甘草 | 補気 | 甘草、白朮、山薬 | |
菖蒲 | 菖蒲 | 醒脾 |
新型コロナ感染症で入院した551名の中で、8.9%に黄疸が認められ、黄疸があった症例では死亡率が高かったことが報告されています。(2021, Bender)
新型コロナ感染後の後遺症として、長期黄疸を認めた症例が報告されています。(2023, Vacheishvili)
新型コロナワクチン接種後に、自己免疫性肝炎を発症して黄疸を呈した32例が報告されています。(2022, Chow)