動悸の中医治療
動悸は中医学では、軽症のものを驚悸、重症のものを怔忡(せいちゅう)と言います。
西洋医学では、頻脈、不整脈、心筋炎、心膜炎、心不全、神経症に当たります。
心痛(胸痺)は、心臓が実際の損傷されて起こる病証で、胸痺が進行したものを真心痛と言います。
心痛(胸痺)は狭心症、真心痛は心筋梗塞のことです。
中医学 | 驚悸(心悸) | 怔忡(心悸) | 心痛(胸痺) | 真心痛 |
西洋医学 | 動悸、頻脈、神経症 | 狭心症 | 心筋梗塞 |
■要点
驚悸・怔忡は虚が主である。常に不安があるので補瀉に加えて、安神の生薬が必要である。
活動後に悪化するものには安神薬、改善するものには活血化瘀を加える。
虚証 | ||
心気不足 | 気短、頭暈、乏力、自汗 | 五味子湯加減 |
心陰虧虚 | 易驚、心煩(しんぱん、モヤモヤ)、不眠、口乾、微熱、五心煩熱、盗汗 | 天王補心丹、朱紗安神丸 |
心脾両虚 | 気短、頭暈、眩暈、顔色艶なし、乏力、納呆、腹腫 | 帰脾湯加減 |
肝腎陰虚 | 不眠、五心煩熱、頭暈耳鳴、急躁易怒、腰痛 | 一貫煎 合 酸棗仁湯加減 |
肝腎陽虚 | 倦怠、少気、便溏、納呆腹腫、冷え症、小便不利 | 理中湯 合 真武湯 |
心虚胆怯 | 易驚、不安、多夢、納少、人の制止も聞かず声を張り上げる | 平補鎮心丹加減 |
+痰を挟む | 十味温胆湯 |
五味子湯加減:人参、黄耆、甘草、五味子、麦門冬、酸棗仁、柏子仁、合歓皮(ごうかんひ、養心安神)
天王補心丹:生地黄、当帰、麦門冬、天門冬、玄参、人参、遠志、酸棗仁、柏子仁、五味子、茯苓、丹参、朱砂、甘草
朱紗安神丸:生地黄、当帰、黄連、朱砂、甘草
帰脾湯加減:人参、黄耆、白朮、炙甘草、当帰、竜眼肉、酸棗仁、茯神、遠志、木香(理気)
一貫煎 合 酸棗仁湯加減:浜防風、麦門冬、生地黄、枸杞子、川楝子、酸棗仁、茯苓、甘草、川芎、知母
理中湯:人参、乾姜、炙甘草、白朮
真武湯:附子、茯苓、白朮、白芍、生姜
平補鎮心丹加減:人参、五味子、山薬、茯苓、天門冬、生地黄、熟地黄、肉桂、遠志、茯神、酸棗仁、竜歯、朱砂
十味温胆湯:半夏、枳実、陳皮、川芎、地黄、茯苓、白朮、炙甘草、黄耆、当帰、白芍
実証 | ||
痰濁阻滞 | 気短(息切れ)、心胸痞悶(ひまん)腫満、痰多い | 導痰湯加減 |
痰熱が内擾して、不眠、口乾苦 | 黄連温胆湯加味 | |
血脈瘀阻 | 短気喘息、胸悶不舒(ふじょ)、時に心痛、時に冷え症 | 血府逐瘀湯加減 |
+気虚 | 去 柴胡、枳殼、桔梗 加 黄耆、党参、黄精(滋陰) | |
+血虚 | 去 熟地黄、枸杞子、何首烏 加 補血養陰 | |
+陰虚 | 去 柴胡、枳殼、桔梗、川芎 加 麦門冬、玉竹、女貞子、旱蓮草 | |
+陽虚 | 去 柴胡、枳殼 加 附子、肉桂、淫羊藿、巴戟天 |
舒(じょ):のばす、ゆるやか
導痰湯加減:半夏、陳皮、茯苓、甘草、酸棗仁、柏子仁、遠志
黄連温胆湯:竹筎、枳実、半夏、橘紅、茯苓、炙甘草
血府逐瘀湯加減:当帰、牛膝、紅花(こうか)、生地黄、桃仁、枳穀(きこく、化痰・行気)、赤芍(せきしゃく)、柴胡、桔梗、川芎