脾胃の昇降失調
臓腑の機能活動の基本は津気であり、昇降失調とは「津気の昇降逆乱と臓腑の機能失調の総合的な反応」です。
肺気上逆 | 宣降肺気 | 麻黄、杏仁 |
胃気上逆 | 和降胃気 | 陳皮、半夏 |
腎気不納 | 収斂・摂納 | 五味子、沈香 |
脾気下陥 | 昇陽挙陥 | 柴胡、葛根、桔梗 |
❑脾胃の昇降失調(中焦の気液が逆乱した病機、昇清降濁が人体の昇降運動の中心)
脾胃の機能は、「脾の昇清」と「胃の降濁」という二種類の基本運動型式によって発現します。
脾の昇清 | 胃の降濁 | |
中医学的説明 | 消化された水穀は心肺に昇り全身に輸布 | 消化管の上下の動き |
西洋医学的説明 | 消化・吸収 | 蠕動運動 |
❑脾胃の昇降失調(上吐下瀉、腹脹、腹痛、吐きたいが吐けない・下痢しそうで出ない、納少、嗳気)の昇清降濁に使う方剤(中医臨床のための病機と治法)
降逆の半夏、厚朴、健脾利湿の白朮が基本です。
藿香正気散 | 六和湯 | 連朴飲 | 蚕矢湯 | 半夏瀉心湯 | |
昇清 | 藿香、紫蘇、白芷 | 藿香 | |||
降逆止吐 | 半夏 | 半夏 | 半夏 | 半夏 | 半夏 |
降逆(脾胃気滞に対する理気薬) | 陳皮、厚朴、大腹皮 | 縮砂、厚朴 | 厚朴 | ||
健脾・利湿 | 茯苓、白朮、大棗+生姜、甘草 | 人参、白朮、茯苓、甘草 | 薏苡仁、通草 | 人参、甘草、大棗 | |
宣発 | 桔梗 | ||||
粛降 | 杏仁 | ||||
祛湿、健脾 | 白扁豆 | 蚕砂 | |||
攻下 | 大黄 | ||||
醒胃化湿 | 木爪 | 木爪 | |||
清熱 | 黄連、山梔子、豆鼓、芦根 | 黄連、黄芩、山梔子 | 黄連、黄芩 | ||
散寒 | 呉茱萸 | 乾姜 |
❑昇降脾胃、「中薬の配合」から引用
基本生薬:白朮(胃の昇清)、枳実(脾胃気滞の理気)
食欲不振を伴う:佩蘭、穀芽
食滞を伴う:神麹、麦芽
脾胃気滞が顕著:木香、縮砂
胃虚で痰を生じ、唾液が多い:半夏、茯苓
※葉天士:益智仁、乾姜 加 半夏、茯苓
白扁豆、甘草、糠米 加 沙参、麦門冬、石斛
※李東垣:胃の昇清に柴胡、升麻、羌活、独活、防風 加 枳実、厚朴、茯苓、沢瀉、黄連、黄柏
※朱丹渓(しゅたんけい):蒼朮、香附子
降濁薬:黄芩、黄連、山梔子 加 大黄、芒硝
昇清薬、昇陽薬:柴胡、升麻 > 防風、葛根、羌活、独活、白芷、藁本、川芎、荊芥、蒺藜子
これらの風薬は効果が短いので補益薬と併用:黄耆、人参、当帰
湿邪が併発:茯苓、沢瀉
痰が併発:半夏、陳皮、茯苓
食滞を伴う:神麹、麦芽