脾虚湿困に使う生薬・方剤

脾虚湿困(または、湿困脾胃、湿困中焦、湿邪困脾)は、脾虚から脾失健運のために湿が脾胃に内生して、胃脘部の痞(つか)え、腹満・腹痛・下痢になります。舌苔は白膩で厚、脈緩。飲留胃腸は、飲邪が胃腸に留積して、脘腹が脹満・痛み、胃に振水音(ポチャポチャ、胃内停水)、腸鳴(腸がゴロゴロ)します。脾胃の昇降失調では、上吐下瀉が起こります。

■脾虚湿困に使う方剤=祛湿+脾胃気滞に対する理気(蠕動運動を促す)

主薬の蒼朮、厚朴、陳皮、炙甘草を中心として、下痢が強い場合は猪苓、沢瀉、白朮、茯苓を追加します。吐き気が強い場合は、半夏、藿香を追加します。脾胃気滞が強い場合は、枳実大腹皮、香附子、縮砂を検討します。

胃内停水では、陳皮、枳実、白朮、茯苓を使います。飲留胃腸では、瀉下薬、利水薬を使います。脾胃の昇降失調では、降逆の半夏、厚朴、健脾利湿の白朮を使います。

津液脾虚湿困胃脘部の痞(つか)え、腹満・腹痛・下痢になります。舌苔は白膩で厚、脈緩主薬の蒼朮、厚朴、陳皮、炙甘草を中心として、下痢が強い場合は猪苓、沢瀉、白朮、茯苓、吐き気が強い場合は、半夏、藿香、脾胃気滞が強い場合は、枳実大腹皮、香附子、縮砂
飲留胃腸飲邪が胃腸に留積して、脘腹が脹満・痛み、胃に振水音(ポチャポチャ、胃内停水)、腸鳴(腸がゴロゴロ)舌苔白膩か微黄、脈沈弦有力瀉下薬、利水薬
胃内停水胃に振水音(ポチャポチャ)陳皮、枳実、白朮、茯苓
脾胃の昇降失調上吐下瀉降逆の半夏、厚朴、健脾利湿の白朮
胃気不降噯気、呃逆(あくぎゃく)、嘔気、嘔吐、吐血、胸郭煩熱、頭目眩暈、痰涎壅滞、喘促咳嗽、驚悸不眠脈は鬱象(沈弦無力)降気の代赭石(多め)>降胃薬(半夏、蒺藜子、栝楼仁、竹茹、厚朴、枳実)
胃気不降→胃気上逆噯気(げっぷ)、呃逆(あくぎゃく)、嘔気、嘔吐、納少、胃部脹満、胃脘疼痛降気の代赭石
降胃の陳皮、半夏、健脾の人参、甘草、大棗、生姜
衝気上逆ホットフラッシュ急性発症、前面から胃を突き上げる、痰涎、腹中膨悶、臭気、吃逆(きつぎゃく)脈弦長有力降気の代赭石
降気の竜骨、牡蠣
蒼朮厚朴陳皮甘草猪苓沢瀉白朮茯苓桂枝枳実香附子大腹皮縮砂木香生姜灯心草藿香半夏蘇葉白芷桔梗生姜
湿困脾胃理気
平胃散湿困脾胃
胃苓湯湿困脾胃下痢
分消湯湿困脾胃水腫気滞
不換金正気散湿困脾胃下痢
嘔吐
藿香正気散霍乱吐瀉風寒
湿滞
胃内停水
茯苓飲行気利水健脾和胃
茯苓飲合半夏厚朴湯

胃苓湯:平胃散+五苓散

■脾虚湿困に使わない生薬

大棗:助湿生熱して中満を引き起こす。生姜と薬対で使うことで、この弊害は軽減されます。

脾胃に滋陰する浜防風(肺、胃)、麦門冬(肺、胃)、鼈甲(脾)には注意が必要です。

■脾虚湿困に使う生薬(◯は優先的に使用する。◎は湿困中焦に使う平胃散の生薬)

散寒藿香化湿止嘔
佩蘭芳香化湿
瀉下甘遂飲留胃腸、二便を通利
利水滲湿茯苓水湿停滞に使う
茵陳蒿清熱除湿、退黄
防已水湿停滞に使う
椒目腹水
祛風湿◎蒼朮燥湿健脾
行気◯◎厚朴行気化湿、脾胃気滞
縮砂開胃止嘔
陳皮脾胃気滞
大腹皮湿困脾胃の腹痛・下痢
檳榔子食滞に使い湿困脾胃に使わない
化痰止咳平喘半夏降逆止吐
葶藶子飲留胃腸、利水、通便
補益白朮燥湿健脾、利尿