IgA腎症のガイドラインについて

IgA腎症は1968年に発見された新しい疾患で、主に免疫グロブリンの一種であるIgAが免疫複合体を形成し、腎糸球体メサンギウム領域に沈着することを特徴とする疾患です。血尿やたんぱく尿などの症状が現れる慢性糸球体腎炎の一種です。

更新されたKDIGOガイドライン(2022, Reich)(国際ガイドライン)によると、日本では扁桃摘出術が推奨されていますが、日本以外ではこの治療は推奨されていません。IgA腎症では、扁桃腺の肥大がなく、繰り返す感染、咽頭炎性血尿を伴うという症状がないことが、扁桃摘出術を推奨しない理由です。

IgA腎症の治療法はまだ十分に定義されておらず、進行性疾患の場合はステロイドと免疫抑制剤が提案されています。扁桃摘出術は、ガラクトシル化不足のIgAを産生する上気道とリンパ組織の感染イベントを減らすために提案されました。日本の文献では、扁桃摘出がIgA腎症に良い効果をもたらすことが報告されています。扁桃摘出術を受けた患者では、腎症状が改善し(血尿やタンパク尿が減少)、腎転帰も良好でした。しかし、これらは非対照研究であり、扁桃摘出術はステロイドや免疫抑制治療と併用していたため、扁桃摘出術そのものの効果を判断することはできません。対照的に、ヨーロッパの研究では、扁桃摘出術はIgA腎症の転帰改善とは関連していなかったと報告されています。肯定的な結果を示した論文のほとんどが非対照のレトロスペクティブ研究であったことが明らかになりましたが、ランダム化比較試験の論文では扁桃摘出術の利点は見いだせませんでした。結論として、このレビューでは国際ガイドラインと一致し、扁桃摘出術はIgA腎症の進行に何ら役割を果たさないと結論付けています。(2016, Ferriozi)

IgA腎症で問題となるIgA 1抗体は、扁桃以外も様々な場所で産生されます。(2008, 比企)