後遺症と抗体価からの個人的考察
まとめ:有害事象が起きる起きないの理由について、ロット差以外の問題を考察しました。
新型コロナワクチン後遺症、新型コロナ後遺症は、"Spikeopathy"と呼ばれ、前例のない高い有害事象率が問題になっています。(2023, Parry)
ワクチン後遺症は、スパイクタンパク質による血栓症や心筋炎などの"スパイクオパシー"と呼ばれる抗原タンパク質の問題がありましたが、接種後数年が経過して、現在はDダイマーはほとんどの方が正常化しており、血栓症などではなく自己免疫疾患の問題が大きくなってきています。
後遺症による自己免疫疾患の種類は多数に及び、これまでに報告されたほとんどの自己免疫疾患を網羅しています。(2022, Chen)(ワクチン副作用の1000の査読付き論文)
抗体価で見ると、後遺症の方は大多数が抗スパイクタンパク質(S)抗体価は高値で抗ヌクレオカプシドタンパク質(N)抗体価はマイナス(ゼロ)です。一部の方は両方プラスですが、これは数ヶ月以内に新型コロナに感染したものと考えられます。
後遺症患者さんの臨床表現型が多種類に渡る理由は、個人個人のHLAによって発症する自己免疫疾患の種類が変わってくるためです。(ワクチン後遺症、コロナ後遺症と自己抗体)
HLAは白血球の血液型と呼ばれ、赤血球を除くほぼ全ての細胞と体液に分布し、自己と非自己の識別に関与する重要な免疫機構として働いています。臓器移植の成功率に、患者さんとドナーさんのHLA型の一致する割合が関係してきます。HLAの種類は3万種類以上あり、これが遺伝的多様性(遺伝的脆弱性=特定の自己免疫疾患への罹患のしやすさ)に関連します。
HLA型は、A座、B座、C座、DR座という4座(8抗原)が重要だとされています。HLA型は両親から各座半分ずつを遺伝的に受け継ぐため、兄弟姉妹の間ではHLA型が完全にあったドナーが4分の1の確率で見つかりますが、多くの患者さんは家族内にHLA型が適合するドナーを持っていません。 また、非血縁者間では、数百から数万分の1の確率でしか一致しません。
もっとも一般的な後遺症症状であるME/CFSは、特定のHLAとの関連が報告されています。(2020, Lande)
一方で、ワクチンを接種しても無症状の方も沢山おられますが、その中で抗S抗体価が高値で抗N抗体価がマイナス(ゼロ)の方、つまりワクチン後遺症の方と同じパターン方が多数おられます。
これはワクチンの成分が過去数ヶ月以内の体内残存していても、HLA(ある意味、遺伝的脆弱性)に問題がなく、自己免疫疾患が発症しないからです。ワクチンを6回、7回接種しても副作用が出ない方も、同じ理由です。
HLAと自己免疫疾患の発症のメカニズムは解明されていませんが、免疫寛容として働くTreg細胞(CD4+ Th 細胞とCD8+ T 細胞)との関連が示唆されています。(2007, Simmonds)
スパイクタンパク質は、約1200種類のアミノ酸から構成されています。体内に侵入する異物タンパク質は5から7のアミノ酸配列が存在すれば、抗原抗体反応を起こすことから、体内に侵入したスパイクタンパク質は、理論的には多種類の自己抗体を作るリスクがありますが、すべての自己免疫疾患を発症するのではなくて、HLAによって発症する自己免疫疾患の種類が変わって来ます。
HPVワクチンでは10年に渡って高い抗体価が維持されます。(HPVワクチン接種後に、長期に渡って高い抗体レベルが維持されます)これは病原タンパク質(L1VLP)が長期間体内に存在することを意味しますが、ワクチン接種者のHLA(遺伝的脆弱性)に対応して、一部の方にだけ自己免疫疾患が発症して来ます。後遺症の発病のメカニズムは、新型コロナワクチン後遺症としての自己免疫疾患と同じと考えています。