自己免疫性脳炎

自己免疫性脳炎は、2006年に脳炎症状を持ち抗NMDA受容体抗体が存在する疾患が初めて報告されました。

もっとも多い症状は脱力であり、他には精神症状、てんかん発作、不随意運動など多岐にわたります。健忘、意識障害、幻覚妄想などの激しい症状を示すことから映画「エクソシスト」、「8年越しの花嫁 キミの目が覚めたなら」などの映画の題材となっています。

自己免疫性脳炎の既存の診断基準は、抗体検査と免疫療法への反応に過度に依存しています。抗体検査は多くの施設で容易に受けられず、結果が出るまでに数週間かかることがあることを考慮すると、抗体状態を早期診断基準の一部として含めることは現実的ではありません。さらに、自己抗体が存在しないことは、疾患が免疫介在性である可能性を排除するものではなく、陽性検査が常に正確な診断を意味するわけではありません。免疫療法への反応を診断基準の一部として使用することも、症状発現時または早期臨床評価時にはこの情報が得られないため、実用的ではありません。自己免疫性脳炎の患者の中には、免疫療法に反応しないか、または確定診断が事前に確立されていない限り、ほとんどの医療制度では受けられない集中的かつ長期の治療を必要とする場合があります。(2016, Graus)

自己免疫性脳炎の診断基準には、ウイルス性脳炎でない脳炎症状の除外診断を採用しており、現代医療では積極的に診断することは簡単ではありません。(2021, 飯塚)

現在では20種類以上の自己抗体が報告されていますが、未知の自己抗体による自己免疫性脳炎の存在が想定されています。半数は癌に伴うもので、保険適応となるのは抗GAD抗体だけです。また、効果的な治療法は確立されていません。(自己介在性脳炎・脳症

急性期の治療として、ステロイドパルス療法、免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)、血漿交換療法などによる免疫修飾療法が第一選択として推奨されている。治療抵抗性の場合はリツキシマブ、シクロホスファミド静注療法などが提唱されているが、本邦での報告は少ないです。急性期治療後の維持療法を行うかどうかは、一致した見解とエビデンスはありません。(小児特定慢性疾患情報センター

新型コロナワクチン接種後に発症した自己免疫性脳炎の報告88例のうち66例を解析しました。74.6%に健忘やブレインフォグなどの精神症状、39.4%に脱力などの運動障害、33.8%にてんかん発作が認められました。発症までの潜伏期間は平均14日でした。免疫療法への反応性は概ね良好でした。(2022, Samim)

新型コロナワクチン接種後に発症した自己免疫性脳炎の18論文を解析した結果、ワクチン接種から臨床症状発現までの潜伏期間は1日から56日でした。約半数の患者は免疫療法で回復しましたが、残りは不完全回復でした。(2024, Finsterer)