分子相同性仮説に対する反論
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イタリアのバーリ大学のKanduc教授は、HPVワクチン後遺症における分子相同性仮説は、「HPV L1 タンパクと ヒトのタンパクとの間に分子相同性があるため、HPV ワ クチン接種により誘導された抗 HPV L1 抗体がヒトの細 胞・組織にも交差反応を起こし臓器障害が生じる」 とするものです。(2009, Kanduc)
同教授は、新型コロナワクチンに関しても同様の問題を指摘しています。(2022, Kanduc)
病原体に特有の配列に基づいたワクチンのみがワクチン接種プロトコルにおける潜在的な交差反応性リスクを無効にする可能性があることを提唱されています。(2016, Kanduc)
この分子相同性仮説に対しての反論がなされています。(2024, 城、角田)
1.そもそもタンパクのうち、エピトープ(抗原の一部で、抗体や免疫細胞が特異的に認識して結合する部分)になり得る 配列は一部の限られた配列であり、HPV の短いペプチド 配列がヒトのタンパクと一致するからといって、ワクチン 接種後にこれらの配列に対する抗体が産生される可能性は 低い 。
よって,タンパク全長から一部を抜き出した “ペンタ / ヘキサ / ヘプタペプチド” 配列が共通すれば自己免疫 疾患の発生は避けられないとする結論は、免疫学の基礎知 識から誤りである。
2.エピトープ配列は、抗体によって認識 される “最小のアミノ酸長” として決定されたものであり、 エピトープ全体から切り離された “ペンタペプチド” は、抗体によって認識されるエピトープとしては機能しない 。
3.Kanduc は HPV L1 タンパクとヒト細胞 内抗原の分子相同性による自己抗体の交差反応を主張して いるが、そもそも抗体は細胞表面に発現する分子には結合 できるが、細胞内には到達しないので、細胞内抗原には結合できない。
4.HPV L1 タンパクに対する分子相同性が自己免疫を誘導するとすれば、HPV 感染者にも自己免疫疾患の発症が見られるはずだが、HPV 感染と自己免疫 疾患の関連は報告がない。