新型コロナと重症筋無力症
新型コロナワクチン接種を受けた重症筋無力症患者294人の中で3人が重症筋無力症が再発しました。新型コロナワクチンは、既存の重症筋無力症の再発を引き起こす可能性があります。(2022, Ishizuchi)
システミックレヴューにて、新型コロナワクチン接種後に発症した重症筋無力症患者231名が報告されています。ワクチン接種後に報告されました。これらの患者では、筋力低下、しびれ、眼瞼下垂などの症状がよく見られました。重症筋無力症は、RNST(Repetitive Nerve Stimulation Test、反復神経刺激試験、重症筋無力症に特異的)、MRC(Medical Research Council Scale、医学研究評議会スケール(筋力評価スケール)、重症筋無力症に非特異的)、NCS(Nerve Conduction Study、神経伝導検査、重症筋無力症に非特異的)、およびAchR結合抗体価検査によって確認されました。(2022, Mirmosayyeb)
■重症筋無力症
重症筋無力症は、筋疲労を主症状とする自己免疫性疾患です。体を動かす際、脳からの指令が脊髄、末梢神経を経て筋肉に伝わり「動き」となりますが、重症筋無力症では末梢神経と筋肉のつなぎ目である神経筋接合部において、異常に産生された自己抗体が悪影響を及ぼし、筋収縮が徐々にできなくなる状態であり、「夕方に増悪する」、「繰り返す運動で力が入らなくなる」といった特徴があります。症状としては、眼瞼下垂(まぶたが垂れる)や複視(ものが二重に見える)を主症状とする眼筋型と、手足の筋肉や呼吸筋が障害される全身型の2つに分けられます。
重症筋無力症(myastheniagravis、MG)は自己抗体の種類によって、1)アセチルコリン受容体(acetylcholinere-ceptor,AChR)抗体陽性MG、2)筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(muscle-specificreceptortyrosinekinase,MuSK)抗体陽性MG、そして,3) 前記の抗体が検出されないdoubleseronegativeMGに分類されます。本邦では、MG全体の80~85%が抗AChR抗体陽性で、残りの5~10%で抗MuSK抗体が検出されます。(2011, 本村)

近年、重症筋無力症の発症の高齢化が国内外から報告されています。

■重症筋無力症の診断
エドロホニウムのリスクと診断精度の限界から、現在では抗アセチルコリン受容体抗体検査や筋電図(反復刺激試験、SFEMG)が優先されます。