ME/CFSと酸素
ME/CFSでは、高圧酸素療法の有効性が報告されています。(2013, Akarsu)(2011, Hoof)
ME/CFS患者では、筋肉への酸素供給量が有意に減少しており、これが筋疲労につながる可能性が指摘されています。(1999, Mccully)
ME/CFS患者に対して、酸素オゾン自己血療法(100~200ccの血液を脱血し、そこにオゾンガスを混合、オゾン化した血液を体の中に戻すという治療法)で疲労を大幅に改善することが報告されています。(2022, Tirelli)(2002, Borrelli)

ME/CFS患者では、筋細胞においての酸素摂取量の低下があり、運動不耐症を引き起こすこと、運動量の増加に対して代謝適応が不十分であることが示唆されています。運動負荷の増加に伴う心拍出量と酸素摂取量から、筋細胞による最大酸素摂取量と酸素摂取量の増加に対する心拍出量の増加率を算出した結果、酸素摂取量の増加に比べて心拍出量の増加率が高くなっています。(2014, Vermeulen)
■酸素療法の比較(Grox3より)
項目 | 病院の高圧酸素療法 (HBO) | 民間の酸素療法 (高圧酸素ルーム/カプセル) |
---|---|---|
定義 | 高圧環境(2~3気圧)で100%酸素を吸入し、血中溶解型酸素を増加させる医療行為。 | 1.2~1.5気圧程度の環境で高濃度酸素を吸入する非医療行為。 |
目的 | 減圧症、創傷治癒不全、末梢循環不全、一酸化炭素中毒などの治療。 | 疲労回復、睡眠改善、ストレス軽減、美容効果など(健康増進目的)。 |
施設 | 病院や専門医療機関(例:木村病院、京都大学医学部附属病院)。 | 接骨院、フィットネスジム、民間サロン(例:はるかぜ鍼灸接骨院)。 |
装置 | 第1種(単人用)または第2種(多人用)の高圧酸素治療装置(例:BARA-MED)。 | 高圧酸素カプセルやルーム(医療機器ではない)。 |
気圧 | 2~3絶対気圧(水深10~20m相当)。 | 1.2~1.5気圧(水深2~5m相当)。 |
酸素濃度 | 100%純酸素。 | 30~50%の高濃度酸素(一部で100%の場合も)。 |
適応疾患 | 保険適用の疾患(例:減圧症、急性網膜動脈閉塞、難治性感染症)。 | 医療的適応なし(健康増進やリラクゼーション目的)。 |
効果 | 溶解型酸素の増加による組織酸素供給向上、血管新生促進、浮腫軽減。 | 軽度の酸素供給増加、疲労回復や気分向上(科学的根拠は限定的)。 |
リスク | 気圧性中耳炎、副鼻腔スクイーズ、酸素中毒(まれ)。医師や臨床工学技士が管理。 | 耳閉塞感、軽い耳鳴り。管理者の専門性が低い場合あり。 |
費用 | 保険適用で1回数千円~(例:保険適用疾患の場合)。自費の場合は高額。 | 1回3,000~10,000円(施設や時間による)。 |
治療時間 | 1回60~90分、2週間程度の継続治療(疾患による)。 | 1回30~60分、単発利用が多い。 |
管理 | 医師や臨床工学技士による厳格な管理。 | 非医療従事者による管理(専門知識が不足する場合あり)。 |
高尿酸血症への効果 | 直接的効果は未確立。炎症軽減や血流改善の間接的効果の可能性(研究不足)。 | 効果は期待薄。血流改善による間接的影響の可能性(エビデンスなし)。 |