<症例>新型コロナワクチン接種後に発症したME/CFS、線維筋痛症の寛解例
40歳、女性、ME/CFS
職域接種で2021年11月に新型コロナワクチンを2回接種後に激しい倦怠感が出現した。その後、多少回復はしたものの、2022年3月に3回目接種後に寝たきりに近い状態となり退職となる。
2023年4月に当院初診となる。倦怠感が強く終日横になっている。全身の痛みがあり、線維筋痛症の圧痛点(16/18)、場所が移動する頭痛、嘔気、下痢、食欲不振、体重減少(45キロ→40キロ)、ブレインフォグ、集中困難、ゆっくりしか歩けない、憂鬱、動悸、不眠、息切れ、冷え性など多彩な症状を認めた。PS 5〜6(自宅での軽作業は可能であるが、就労は出来ない)
エキス剤漢方薬(補中益気湯、防已黄耆湯、釣藤散)と五味除去散で治療開始するが、多少効果はあったが不十分なため、2023年10月より煎じ薬に変更する。
弁病:虚労、頭痛
弁証:脾陽虚(脾虚湿蘊)、肝陽頭痛
治法:益気健脾、和胃滲湿、平肝潜陽
方薬:1)茯苓7g、白朮5g、人参5g、炙甘草3g、山薬5g、熟地黄3g、大棗6g、黄耆7g、天麻5g、蒺藜子5g、枳実6g、半夏7g、生姜3g 分3 食間
2)水蛭五味除去散半量(栝楼実末1g、水蛭末0.45g、莪朮末0.5g、鶏血藤末0.7g、全蠍末0.2g 分2 送服)
2024年6月、症状はかなり回復してパートで復職する。時々の下痢、頭痛、冷え性は残っているものの、それ以外の症状はほぼ回復した。PS2〜3レベル(週3日から4日の8時間就労)。
方薬:1)茯苓7g、白朮5g、人参5g、炙甘草3g、山薬5g、熟地黄3g、大棗6g、黄耆7g、天麻5g、蒺藜子5g、遠志7g、補骨脂5g、続断5g 分3 食間
2)水蛭五味除去散半量(栝楼実末1g、水蛭末0.45g、莪朮末0.5g、鶏血藤末0.7g、全蠍末0.2g 分2 送服)
コメント:エキス剤漢方薬はある程度は効果があったが、不十分であった。煎じ薬に変更した後に、復職レベルまでは回復したが、正社員のレベルまでは回復していない。毎月徐々に回復の兆しはあるものの、完治までの道のりは長い。初診時に見られた線維筋痛症の症状は、治療経過中にほとんど寛解した。しかしながら、過労が重なった時や経過中に新型コロナ感染症に罹患した際に、下半身の痛みとして一時的に再発した。線維筋痛症は、中医学では痺証として治療されることが多いですが、現代中医学では線維筋痛総合征と弁病されます。この症例は、痺証としてではなく、線維筋痛総合征の脾虚湿蘊として治療して有効でした。これはこの方の過敏性腸症候群とも合致します。
機能性身体症候群という新しい疾患概念がありますが、この方のME/CFS、線維筋痛症、過敏性腸症候群、うつ病を含む症候群です。


