機能性身体症候群、中枢性過敏症候群
機能性身体症候群(functional somatic syndrome, FSS、central sensitivity syndrome(中枢性過敏症候群))は「適切な診察や検査を行っても,器質的疾患(病理学的所見の認められる疾患)の存在を明確に説明できない身体的訴えがあり,それを苦痛と感じて日常生活に支障をきたす病態」と定義されます。(2019, 村上)(2019, Roenneberg )
(1)FSSの各疾患には共通症状が多く、診断基準も類似している。
(2)FSSの各疾患は他のFSS疾患の診断基準を満たし、しばしば相互に合併する。
(3)FSSの患者は、几帳面、徹底性、完全性、強迫性ならびに神経質等の類似した性格的特性を有する。
(4)FSSの患者は、うつ、不安ならびに認知的問題等の多彩な精神症状をしばしば伴い、不安薬、抗うつ薬ならびに抗痙攣薬等、類似した
薬物治療に反応しやすい。カウンセリングや認知行動療法等心理療法の対象となる。

個々の症候群には大きな重複があり、類似点が相違点を上回ると結論付ける。症例定義、報告された症状、そして患者の性別、予後、治療への反応といった症状以外の関連性において、類似点は明らかである。これらの症候群を特定の症状に基づいて定義する既存の定義には限界があり、むしろ多次元的な分類の方がより効果的であると考えられる。(1999, Wessely)
心理的トラウマおよび心的外傷後ストレス障害(PTSD)と、線維筋痛症、慢性広汎性疼痛、慢性疲労症候群、顎関節症、過敏性腸症候群などの機能性身体症候群との関連性を体系的に検証したところ、トラウマ体験を報告した人は、機能性身体症候群を発症する可能性が2.7倍(95%信頼区間 = 2.27~3.10)高かった。(2014, Niloofar)
機能性身体症候群は、central sensitivity syndrome(中枢性過敏症候群、中枢性感作症候群)とも呼ばれます。線維筋痛症は痛覚過敏、過敏性腸症候群は内蔵過敏、うつ病などは神経過敏です。中枢性過敏症候群に対しては、医療介入だけでは、CSS患者の症状管理に十分ではありません。医療的介入だけで済ませることは、同じ診断を受けた患者全員が均質な集団であるという考え(「患者均一性神話」)という間違った考えに基づいています。あらゆる中枢性過敏症候群患者の症状管理において環境的・状況的背景がより重要であることを認識すべきである。生理的、行動的、認知的、情動的、社会的特徴を含む多因子的なものである。これらの各要因を認識しないことは、患者の症状に対する不完全な理解につながる。ただし、心理的・社会的要因は患者の臨床症状を悪化させる可能性があるが、それらが症状の唯一の原因となることは稀である。(2015, Adams)

