低用量ナルトレキソン
まとめ:低用量ナルトレキソンが新型コロナ後遺症、ワクチン後遺症に有効です。特に痛み、ブレインフォッグへの効果が期待できます。
■ナルトレキソンは、依存症をはじめ、過食、肥満、癌、自己免疫疾患、自閉症などへの有効性が報告されています。
オピオイドの非選択的アンタゴニストであるナルトレキソンを少量投薬する低用量ナルトレキソン(naltrexone)が炎症プロセスを伴うと考えられている慢性疼痛状態に対する有望な治療アプローチであることが総括されています。(2014, Younger)
低用量のナルトレキソンは、1日あたり 1~5mgの低用量の投与で、一過性のオピオイド受容体遮断によって内因性オピオイドシグナル伝達を全身的にアップレギュレートすることに加えて、Toll 様受容体 4 シグナル伝達を調節することにより、グリア炎症反応を軽減することが示されています。(2018, Tojan)
低用量のナルトレキソンは、内因性オピオイドとオピオイド受容体の結合をブロックすることにより、免疫細胞を広く刺激することにより、炎症、自己免疫疾患、癌の治療の有効性が総括されています。(2018, Li)
低用量のナルトレキソンは、多発性硬化症、線維筋痛症(2013, Younger)、クローン病への安全性と有効性が指摘されています。(2018, Patten)
ME/CFSの痛みに対してナルトレキソンの有効性が指摘されています。(2019, Cabanas)(2021, Cabanas)
アルコール依存症に対してナルトレキソンは、アルコールへの渇望と飲酒の減少、およびアルコールを摂取したときの多幸感の減少を報告しました. 再発率は、プラセボで治療された被験者よりも、ナルトレキソンで治療された被験者で有意に低かったことが報告されており、獲得した報酬系を改善する作用が考察されています。(1996, O'Brien)
ナルトレキソンの過食症への有効性が報告されています。(2019, Stancil)
過食による肥満の治療として、ナルトレキソンとブプロピオンの併用療法がありますが、これは脳の視床下部と報酬システムに作用することが考察されています。(2014, Billes)
ブプロピオン (bupropion) は、ノルエピネフリン・ドーパミン再取り込み阻害薬(NDRI) として作用する抗うつ薬の一種です。自殺のリスクの増加、精神病症状の増悪などから、日本での治験は中途で中止されています。
自閉症に対するナルトレキソンは、0.5 ~ 2mg/kg/日の範囲の用量で最も一般的に使用されており、特に自傷行為の減少に効果的であることが報告されています。それ以外にも、多動、興奮、過敏性、癇癪、社会的引きこもり、常同行動を軽減することが指摘されています。(2006, Eichaar)
■ナルトレキソンは、新型コロナウイルスの体内への侵入と増殖を阻害します。後遺症にも有効です。
低用量ナルトレキソンは、ERK1/2 阻害剤としての活性を示し、さらにACE2と受容体結合ドメイン(RBD) の相互作用を阻害することから、新型コロナウイルス感染症の治療への有効性が指摘されています。(2022, Choubey)ERK1/2 のリン酸化状態はウイルス負荷と正の相関があり、ERK1/2 阻害はウイルス複製とウイルス感染性を抑制します。
低用量ナルトレキソンは、新型コロナ後遺症の罹病期間は平均11ヶ月ですが、それを2ヶ月に短縮することが出来たことが報告されています。測定された7つの症状の中で、気分の改善以外の、日常生活動作の制限、エネルギー レベル、痛みのレベル、集中力のレベル(brain fog)、睡眠障害が改善されました。(2022, O'Kelly)
低用量のナルトレキソンはミクログリアの活動を阻害します。ミクログリアは中枢神経系の免疫細胞であり、刺激されると、痛み、疲労、認知機能障害 (brain fog)、 睡眠、および気分障害に関連する炎症性産物を生成します。低用量のナルトレキソンは、ミクログリア細胞に見られるToll-like受容体を阻害します。その結果、炎症性物質の産生が減少し、症状が改善されます。(2007, Watkins)
■医薬品のセリンクロが同様の作用をする可能性があります。
セリンクロ(ナルメフェン)はμオピオイド受容体及びδオピオイド受容体に対しては拮抗薬として、κオピオイド受容体に対しては部分的作動薬として作用する。ことにより飲酒量の低減作用を発揮すると考えられているが、明確な機序は不明である。