ヒドロオキシクロロキニン

まとめ:新型コロナ感染症、後遺症関連に関して、特に自己免疫疾患系の後遺症に対してヒドロオキシクロロキニンが推奨されています。一方で副作用の問題も指摘されています。

ヒドロオキシクロロキニン(Hydroxychloroquine、商品名プラケニル)は、キナの木の樹皮の粉末からの抗マラリア特性を持つ抽出物のキニーネに似せて作られた合成薬で、古くから存在するマラリア治療薬です。SLEやリウマチなどの自己免疫疾患の治療に使われています。

ヒドロオキシクロロキニンは、細胞内pHを上昇させることが知られており、特にエンドソーム活性に影響を与えます。(2003, Savarino)(2007, Trani)

エンドソームとは、細胞内に取り込まれた物質の選別を行う細胞内の構造物(オルガネラ)です。エンドソームが行う選別、分解、再利用を細胞のエンドサイトーシス(飲食作用)と言います。

新型コロナウイルスをはじめ、様々なウイルスに対して、ウイルスの複製の pH 依存ステップを阻害して抗ウイルス作用を発揮します。また、サイトカインの放出と産生を抑制する免疫調節作用があり、自己免疫疾患に有効です。(2003, Savarino)(2020, Meyerowitz)

ヒドロオキシクロロキニンは、リソソーム内腔アルカリ化剤としてオートファジーを阻害します。(2013, Yang)

自己免疫疾患に対する作用機序としては、いくつかの細胞経路に影響を与えることにより、オートファジー、エンドソーム Toll 様受容体活性化、カルシウム シグナル伝達など、複数のエンドリソソーム機能を阻害します。これらの効果は免疫系のいくつかの側面を変化させ、炎症誘発性サイトカインの産生と放出を減少させるという相乗効果をもたらすと考えられていますが、完全には解明されていません。(Nirk, 2020)

■ヒドロオキシクロロキニンの問題

ヒドロオキシクロロキニンは、カリウムチャネルをブロックし、QT延長症候群から心血管リスクにつながります。(2022, Solow)(2017, Merino Argumánez)

新型コロナウイルス治療においても、ヒドロオキシクロロキニンとクロロキニンがQT延長から心室性不整脈を起こすことが報告されています。(2020, Jakerson)

QT延長のリスクを高める第一の要因は低カリウム血症(2022, Shiabone)で、次が低マグネシウム血症です。これらは、患者の血清レベルに基づいて補正することが推奨されます。(2022, Shohna)

網膜血管が細くなり視野が狭くなるクロロキニン網膜症と呼ばれる網膜毒性のリスクが指摘されており、副作用の早期発見のため眼科医による定期的な検査が必要とされています。(2007, Flach)

ヒドロオキシクロロキニンは、クロロキニンの副作用を軽減するために合成された薬剤です。(2020, Nirk)