Dダイマーとワクチン後遺症

まとめ:Dダイマーは、ワクチン後遺症のリスク評価および治療の目安のひとつとして有用です。抗凝固療法はDダイマーが高いほど有効で、Dダイマーが低い場合は抗凝固療法の有効性は低くなります。Dダイマー高値に対して、ACE2を阻害する治療も有効です。

D-ダイマー (DD フラグメント + E フラグメント) は可溶性複合体であり、細網内皮および腎経路によって除去されるまで血漿中を循環します。血漿中を循環する D ダイマーの半減期は 8 時間であり、血栓形成後わずか 2 時間で血中に検出できることは注目に値します。D-ダイマーの形成は、凝固および線溶イベント中に発生する架橋フィブリン分子の生成および分解中にのみ発生します。したがって、D ダイマー分子は、これらのイベントの直接的なマーカーとしてだけでなく、血栓活性の間接的なマーカーとしても機能します。 (2022, Nasif)

D-ダイマーが高い値を示していることは、数日前に体内で血栓が出来たということを示しています。Dダイマーが基準値よりも高値であるということは、体内で現在進行形で血栓形成傾向であることが推測されます。また、D-ダイマーの値がどんどん下がり、正常値に近づいていれば、溶かすべき血栓が小さくなっていることを示します。

D-ダイマーはフィブリンの形成と分解のバイオマーカーであり、Dダイマーの上昇は身体のどこかで異常な血液凝固が起こっていることの決定的な証拠です。(2022, Fazio)

Covid-19で入院した重篤でない患者では、ヘパリン(最も一般的には低分子量ヘパリン)による治療用量の抗凝固療法により、退院までの生存率が高くなりました。Dダイマーの値が高い群と低い群(正常範囲の上限を2倍超えるか、超えないか)に分けると、高Dダイマー群でより効果がありました。(2021, ATTACC)

重度の新型コロナ感染症の入院患者では、Dダイマーがカットオフ値(0.5μg/mL )の6倍を超える3.0 μg/mL 以上ではヘパリン療法が有効であったが、それ以下では統計学的な有効性はなかったことが報告されています。(2020, Tang)

Covid-19の重症患者では、ヘパリンによる治療用量の抗凝固療法の有効性はありませんでした。(2021, REMAP-CAP)

フランスで新型コロナ感染症で入院中の71人の検査結果から、1.0 μg/ml を超える D ダイマー濃度の上昇は、静脈血栓塞栓症のリスクと関連することが報告されています。(2020, Atifoni)

中国で新型コロナ感染症で入院中の191人の検査結果から、1.0 μg/ml を超える D ダイマー濃度の上昇は、予後のリスクと関連することが指摘されています。(2020, Zhou)

新型コロナ感染症の61例に対して、イベルメクチン投与群と非投与群を比較したところ、投与群ではCRPとDダイマーが急速に低下して、抗炎症および抗線溶活性が示唆され、早期退院と死亡率の減少をもたらしたことが報告されています。(2022, OE)

犬のフィラリア症のイベルメクチンなどによる成虫駆除治療中の肺血栓塞栓症の評価として、Dダイマー値の変動が有効な指標になることが報告されています。(2013, Carretón)

ワクチン接種後に、激しい頭痛、高熱、筋肉痛を発症して、血栓症の臨床症状はないが、Dダイマーが大幅に上昇して、治療後に改善した症例が報告されています。(2022, Fazio)

新型コロナ後遺症(post-acute sequelae SARS-CoV-2 infection, PASC)において、Dダイマーは感染後6ヶ月まで上昇しており、PASC の持続性は、D ダイマー値の増加と直接的な相関があります。Dダイマーは、PASC患者のバイオマーカーとして使用できることが報告されています。(2022, Kalaivani)

新型コロナワクチン接種後の血栓症のリスクを、Dダイマーが反映することが指摘されています。(2023, Lippi)

D ダイマー濃度は年齢とともに増加し、高齢者における D ダイマー アッセイの臨床的価値が低くなることが知られています。(2007, Harper)