夜更かしに対する漢方治療
現代社会に特有の病因病機と対処法(中医臨床2016、木田)をまとめました。
夜更かし・睡眠不足は、中医学から見ると「心肝腎の陰虚」によって起こってきます。
養生として、「夜11時までにには寝る。少なくても7時間以上寝る。」ことが基本です。
津液とは、人体内の正常な水分の総称で、血液・体液・分泌液のことです。
陰液とは、津液に精(気血津液と並んで人間にとって根源的な物質であり、人間の生殖・発育・老化に関わっている)を加えたものです。陰陽論から、陽の力を発揮するものを陽気と呼び、陰の力を発揮するものが陰液と呼びます。
陰虚とは、陰液の不足で生じた状態のことです。陰虚では、痩せ型、口咽が乾く、寝汗、手足のほてり、目がかすむ、動悸、不眠、キーンという耳鳴り、腰が重だるく下肢の脱力が見られます。
身体を冷やす働きを持っている陰液が不足することにより(陰虚)、身体を温める作用を持つ陽気を抑制できず熱化が起こって心火、肝火が起こってきます。
一般的には、肝火とは肝の疏泄(発散、排泄)作用が失調して起こる肝気鬱滞が長引いて、発熱性症状を現してくるもののことです。
(1)心陰虚:陰虚に加えて心の症状(動悸、不眠多夢、健忘)が目立ちます。
(2)肝腎陰虚:陰虚に加えて肝(目がかすむ、頭痛)と腎(腰がだるい、めまい、耳鳴り)の症状が目立ちます。
(3)心火:心の陽気が亢進した状態のことです。心陰虚に加えて興奮、多弁となります。
心火亢盛:心煩、不眠、顔面紅潮、口渇、舌紅、脈数
(4)肝火:肝の疏泄(発散、排泄)作用が失調して起こる肝気鬱滞が長引いて、発熱性症状(化熱)を現してくるもののことです。陽気は関係なく肝気が化熱したものです。肝陰虚に加えて、目や顔が赤くなり、怒り狂う症状が見られます。
肝火:目の充血、眼痛、面赤、頭痛、眩暈、脇部・季肋部痛、口苦、大便秘結、小便が黄色、急躁易怒、脈弦数
心血虚により、心の陰液にが不足すると心陰虚になります。心陰虚により腎陰に影響を及ぼすと心腎陰虚になります。
心腎陰虚が続くと、心陰が心陽を抑制することが出来なくなり心陽が亢進して心火亢盛になります。
心火亢盛が肝に影響を及ぼし、肝火上炎となります。
心は神志を主り、肝は疏泄を主り相互に影響しあうので、心火が肝火を起こし、肝火が心火を起こします。