多汗症の中医治療
多汗症(hyperhidrosis)とはエクリン汗腺の機能が亢進した状態です。
内熱薫蒸(くんじょう) | 過食過飲が外因 | ||
①陽明胃熱 | 食事の時に頭額に多汗 | 清胃泄熱 | 白虎湯加減 |
②少陰心火偏亢 | 情緒緊張して心煩多汗 | 清心瀉火 | 清心蓮子湯加減 |
③厥(けつ)陰肝鬱化火 | 急躁易怒して突然に多汗 | 清泄肝火 | 当帰竜薈(かい)湯加減 |
④陰虚内熱 | 手掌足蹠(せき)のほてり・多汗、咽燥頬紅 | 養陰清熱 | 麦味地黄丸加減 |
陽虚腠疏(そうそ) | 陽気虚弱のため衛外不固(えがいふこ)・膚腠不密で多汗 | ||
①衛外陽虚営衛失和 | 活動すると多汗、悪風・精神疲労・肢冷を伴う | 調和営衛、固表斂汗 | 桂枝湯加減 |
②心陽虚 | 風に遭って多汗、動悸・失眠を伴う | 益気温陽 | 参附湯加減 |
③心腎陽虚 | 冬季に腋窩部に多汗、寒さに伴って多汗となり、冷え症を伴う | 扶正助陽 | 右帰丸加減 |
湿熱薫蒸 | 偏食過食飽食による脾胃の損傷で、脾の健運作用を失って、内に湿が生じて、汗が外泄される | ||
①湿熱上蒸 | 頭部に発汗、身熱がある | 清脾泄熱 | 瀉黄散加減 |
②湿熱傍流 | 手足に多汗、だらだら発汗して止まらない | 清熱燥湿 | 清脾飲加減 |
③湿熱下趨 | 陰嚢部に多汗 | 清肝瀉火 | 竜胆瀉肝湯加減 |
気血瘀阻 | 気血不充などで、偏側に瘀阻を生じて多汗となる | ||
①虚証(気血不調) | 半身の雨がふるような多汗 | 補気益血 | 十全大補湯加減 |
②実証(気滞血瘀) | 特定の部位の雨がふるような多汗 | 理気活血 | 復元活血湯加減 |
腠理(そうり)とは、「皮膚のきめ」のことで、腠理の開閉により発汗を調節します。
衛外不固(えがいふこ)とは、陽気虚弱による固表機能が働かなくなり、皮膚腠理が緩み、外邪の侵入を受けやすくなった状態。
斂汗(れんかん)とは、体表の皮膚を引き締めて汗を止めるということで、止汗と同じ意味です。
白虎湯加減:石膏、知母、甘草、山梔子、黄芩、山薬、玄参、石斛
清心蓮子湯加減:黄芩、麦門冬、地骨皮、石蓮子、茯苓、黄耆、党参、灯心草(とうしんそう、利水滲湿)、車前子
当帰竜薈(かい)湯加減:竜胆草、山梔子、黄連、黄柏、黄芩、白芍、当帰、柴胡、青黛(せいたい、解熱・涼血)
麦味地黄丸加減:麦門冬、乾地黄、山茱萸、茯苓、沢瀉、地骨皮、牡丹皮、山薬、五味子、竜骨、牡蛎、石決明
桂枝湯加減:桂枝、甘草、白芍、黄耆、竜骨、牡蛎、党参、白朮、麻黄、大棗
参附湯加減:党参、麦門冬、甘草、生地黄、地骨皮、附子、黄耆、当帰、五味子
右帰丸加減:附子、山茱萸、杜仲、熟地黄、枸杞子、山薬、肉桂、甘草
瀉黄散加減:藿香、佩蘭(はいらん、祛暑)、茯苓、石膏、山梔子、黄連、黄芩、升麻、沢瀉
清脾飲加減:柴胡、黄芩、厚朴、半夏、白朮、石膏、牛蒡子(ごぼうし、辛涼解表)、知母、黄連
竜胆瀉肝湯加減:竜胆草、山梔子、柴胡、黄芩、沢瀉、白芍、杜仲、茯苓、車前子
十全大補湯加減:黄耆、党参、茯苓、白朮、陳皮、当帰、赤芍、白芍、熟地黄、川芎、丹参、紅花
復元活血湯加減:当帰、白芍、乾地黄、花粉、大黄、枳穀、柴胡、甘草、丹参、益母草(やくもそう、活血化瘀)