自閉症への栄養介入、最新のレビュー

2020年にKarhuらが、自閉症への栄養介入をテーマに総論を出しています。

自閉症についてはメチレーション回路の異常仮説があり、①抗酸化物質のグルタチオンの不足、および②神経発達のための遺伝子発現のためのエピジェネティック制御に重要な役割を担うメチルドナー(メチル基を他に与える)であるSAMeの低下が指摘されています。

自閉症の胃腸障害は一般的で、腸の透過性の亢進が指摘されています。

神経伝達物質の90%以上を産生する腸内細菌叢の乱れが、腸脳相関により脳の発達に影響を与えています。

小麦に含まれるグルテン、乳製品に含まれるカゼインは、①遅延型食物アレルギーの原因となり炎症を起こします。また、消化されることによってオピオイド様ペプチドとなり、②脳でオピオイドレセプターと結合して自閉症症状に影響し、③グルタチオンの原料となるシステインの取り込みを阻害しメチレーション回路の問題を起こします。

グルテンフリーカゼニンフリーダイエットを行うことで、他の食物に対する遅延型食物アレルギーも軽減されることが報告されています。

ケトジェニックダイエット(脂肪が豊富、タンパク質が十分、炭水化物が少ない)では、身体でグルコース代謝だけでなく脂肪代謝を使えるようになります。

自閉症の治療に関してのケトジェニックダイエットは、動物実験において、腸内フローラを変化させて、神経学的な改善をもたらす可能性が示唆されています。

ケトジェニックダイエットは継続するには難易度が高く、人での報告は十分には行われていません。

プロバイオティクスは、腸内フローラおよび腸の透過性を改善する可能性がありますが、どのプロバイオティクスが自閉症に有効であるか、また副作用について問題が明らかにされていません。

プロバイオティクスが、グルテンやカゼインの消化を助け、腸内毒素の産生を抑制して、腸の炎症と透過性を低下させることが示唆されています。

プロバイオティクスは、自閉症に対して明確な治療効果がないという報告もあります。

SCDダイエットは、SIBOの原因となる炭水化物を制限するダイエットで、低FODMAP食とほぼ同じです。

自閉症の胃腸症状を改善する効果が期待出来ますが、臨床報告はまだ1論文だけです。

オメガ3脂肪酸は、シナプスや記憶形成や認知機能などの領域に関与している脳の発達に関係しており、自閉症との関連が示唆されています。

ただし、オメガ3脂肪酸を自閉症児に投与した臨床研究では、一致した結果は出ていません。

自閉症児ではビタミンA欠乏症が指摘されていますが、補充療法の有効性は証明されていません。

自閉症児でのビタミンC不足が指摘されており、自閉症児では壊血病が時に見られます。

自閉症児にビタミンCを投与することによって、酸化ストレスを軽減出来ることが報告されています。

メチレーション回路の問題は、遺伝的変異(SNP)や必須ミネラルの不足によって起こって来ます。

ビタミン6、ビタミン12、葉酸、ビタミンD(CBSとCBEに関与)がこの回路に関与してます。

ビタミンB6とマグネシウムの投与が、自閉症の改善には有効ではなかったというレビューが出ています。

アメリカ小児科学会は、自閉症に対するメガビタミン療法は証明出来ていないと声明を出しています。

自閉症児では、ビタミンB6、B9、B12の同時欠乏があり、これがシスタチオンの合成障害を起こし、ホモシステインの蓄積を起こし、メチル化と抗酸化力の低下に繋がっています。

この同時欠乏は、腸内フローラの乱れによる吸収障害があると考えられています。

経口のビタミンCがグルタチオンレベルを回復させたという報告がありますが、これはグルタチオンのリサイクルを補助したからだと推測されています。

経口のビタミンB12が、メチレーション回路を回復させたという報告があります。これは、経口のB12が皮下注射のB12の代用になることを示唆しています。

自閉症の死後脳では、メチルB12が有意に低下していましたが、自閉症の血中B12濃度については一致した結論が出ていません。

出産時の妊婦の血中B12は、自閉症リスクと相関しています。

皮下投与したメチルB12は、一部の自閉症児の症状を改善し、グルタチオンレベルを回復させましたが、自閉症児全体で見ると有意な効果は観察されていません。

単独のサプリメントでの自閉症症状の改善は限界があり、マルチビタミンとマルチミネラルの投与により知能指数が改善することが報告されています。

メチレーション回路と自閉症との関連は示唆されていますが、中国での研究では、メチレーション回路の酵素の遺伝的変異(SNP)は自閉症児の重症度との関連を示しませんでした。

メチレーション回路の最も有名な遺伝子変異であるMTHFR677Tを持つ人は、発達障害に関連する行動異常があることが報告されています。

結論としては、メチレーション回路と自閉症との関連は答がまだ出ていません。

妊婦への葉酸サプリの投与が、自閉症の発病リスクを軽減することが報告されています。

反対に、2017年に葉酸の妊婦への過剰投与が自閉症リスクと関連する可能性も報告されています。

(大人の葉酸の1日摂取量は1000mcgまでが推奨されています)

葉酸受容体自己抗体を持つ自閉症児への高容量の葉酸で、言語能力が改善されたことが報告されています。

葉酸受容体自己抗体を持つ妊婦への高容量の葉酸で、自閉症児の発病リスクを防ぐ可能性が示唆されています。

葉酸受容体自己抗体は、自閉症のサブグループのバイマーカーになる可能性があります。

葉酸の投与およびメチル葉酸の注射で自閉症児の症状の改善が報告されています。

自閉症児の症状と血清葉酸濃度との関連は否定されています。

葉酸と自閉症の関連についても明確な答えはまだ出ていません。