インスリンが老化の原因
1.インスリンは成長と老化に深く関わっています。
1日で1キロ成長する子牛の秘密は、インスリン様成長因子が牛乳に含まれていることです。
(このことが、乳製品が乳がんや前立腺癌のリスクになる原因です。)
インスリン様成長因子は成長期において、成長ホルモンと共に、縦方向への骨の成長の決定的因子であり、またインスリンは同化ホルモンとして身体の横方向の成長を促進する上で重要なホルモンです。インスリンがインスリン様成長因子の産生を増加させるなど、インスリンとインスリン様成長因子は連携して機能しています。
しかし成長が終わったあとの生物にとって、糖質の過剰摂取と、それによるインスリンの分泌促進は様々なメカニズムで老化を促進し、寿命を短くする方向で作用します。
成長と老化の両方にインスリンが深く関係しています。
インスリンの成長・老化作用から、子供には糖質制限を勧めないが、大人には糖質制限を勧めるという大まかな基本方針が浮かび上がって来ます。
高度肥満の子供や痩せ形の大人には、この原則が適応出来ないこともあります。
長寿研究では、平均寿命が短く研究しやすい線虫がよく対象とされています。
線虫の中でも寿命の長い線虫が存在しており、その遺伝子解析によってインスリンが働かない線虫は寿命が倍になることが明らかにされています。
線虫が語る「老化とはインスリンが働くことである」と言われています。
またカロリー制限によって、霊長類を含む広い範囲の生物で寿命が延長することが知られています。
このカロリー制限の中身は、糖質制限であり、つまり低インスリンで長寿になるということです。
2.インスリンの老化促進作用のメカニズムは複数あります
線虫だけでなく酵母、ショウジョウバエ、マウスでもインスリン様シグナルが寿命を制御しており、インスリンが普遍的で決定的な寿命制御経路であり、長寿遺伝子に抑制的に作用することが分かっ てきています。
糖質の過剰摂取は、本来は不要なインスリンの分泌に伴って活性酸素が発生します。インスリンによって下げられた血糖値を上げるためにグルカゴンなどのホルモンが分泌されて、また活性酸素が余分に発生します。
また糖質の過剰摂取は、タンパク質の糖化やAGE(糖化最終生成物)の産生を促進し、組織の炎症と酸化ストレスを高めます。その結果、細胞や組織の老化や機能低下を促進します。
インスリンの最も一般的な作用は、肥満ホルモンとしての役割です。肥満細胞はアディポサイトカインと言われる様々なホルモンを分泌して老化を促進します。
3.鳥類は常に高血糖であるが長寿である
鳥類は、空腹時であっても300mg/dl以上の高血糖を維持しているにもかかわらず、循環系、神経系の障害といった糖毒性が発生しません。
しかも比較的長寿の傾向があります。特に大型の鳥は長寿であり、 例えばオウム類、フクロウ類、ツル類、タカ類、カモメ類の寿命で30年を超えるデーターがあります。
鳥類は、生まれつきインスリン抵抗性が高いので、1型糖尿病と似た状態です。
老化を促進させるインスリンが少ないまたは働かない(抵抗性)があれば、長生き出来ると言う証拠のひとつです。
糖毒よりもインスリン毒です。
鳥類は、空を飛ぶことが出来るので狩猟範囲が広いため、飢餓になるリスクが少ないです。
そのために、エネルギーを蓄える肥満というシステムが要りません。
また、肥満になると空を飛べなくなるので、太ることが許されません。
以上から、インスリン抵抗性を体質的に持っていると考えています。
1型糖尿病や痩せ形でインスリン分泌の少ない2型糖尿病の人は、本来は糖尿病体質と言われる長寿体質です。
老化を防ぐには、低インスリンダイエット(糖質制限、食べる順番ダイエット、糖質選択など)は必須です。
飢餓のリスクのない現代人は、肥満や肥満ホルモンのインスリンは不要どころか、寿命を縮めるものです。
甘い物を食べるほど老けるということです。
ただし、基礎分泌のインスリンは生命維持に必要です。
実際、1921年にインスリンが合成されるまでは、1型糖尿病で内因性インスリンゼロの場合は平均余命は、診断後半年程度でした。
インスリンが開発されて以降、1型糖尿病の寿命は劇的に改善されています。
基礎インスリンがないと、常に身体を壊す(異化)グルカゴン優位となり生命や身体を維持できません。
すべての体内物質は適量ではプラス、大量ではマイナスに働きます。