自閉症と腸内フローラ

自閉症の子供の胃腸症状が、自閉症の重症度と相関関係しており、さらに便検査で短鎖脂肪酸が低レベルであることが報告されています。(2011年、Adamsら)

退行性自閉症児にバンコマイシンを投与したところ、行動の改善が見られましたが、バンコマイシンの中止後2週間以内に症状の悪化を認めました。(2000年、Sandlerら)

自閉症のさまざまなマウスモデルを使用した研究は、腸内フローラが自閉症に関与しているという考えを支持しています。(2013年、Hsiaoら)(2017年、Limら)

自閉症の方の多くは偏食です。偏食によって腸内フローラの問題が発生していると考えることが出来ます。

自閉症と腸内フローラの関係は、原因なのか結果なのかは結論が出ていません。

人類の食文化を振り返ってみると、一日中歩き回って食料を探して、とにかく食べられるものを昆虫でも野草でも、選ばずに何でも食べてきました。

現代人の好きな物だけを選んで食べる食べ方とは反対です。

多種類の食材を食べる多食(造語)と一部の食材にこだわってしまう偏食は真逆の食べ方です。

自閉症の腸内フローラに問題があることが指摘されています。

2019年のXuらは、アッカーマンシアバクテロイデス、ビフィズス菌、パラバクテロイデスの割合が減少し、フィーカリバクテリウムの割合が健常者と比較して自閉症児で増加したことを報告しました。

自閉症児では量的には、エンテロコッカス、大腸菌、バクテロイデス、ビフィズス菌が少なく、ラクトバチルスが多くなってます。

2018年にHughesらは、自閉症における腸内フローラのこれまでに報告は、結果は不均一であり、しばしば矛盾していることを報告しています。

2020年にBezawadaらは、自閉症の子供の腸内フローラの報告をまとめて、自閉症の子供たちの存在量が有意に高いと報告されている種には、クロストリジウム、サテレラ、デスルフォビブリオ、ラクトバチルスであるが、調査結果は研究間で一貫性がないことを報告しています。

2020年にHoらは、自閉症の子供の腸内フローラの報告をまとめましたが、Prevotella、門レベルのFirmicutes、Clostridium perfringensを含むClostridialesクラスター、およびBifidobacterium種の識別可能なパターンを除いて、ASD研究全体で報告された腸内微生物の変化に一貫性がないことを報告しています。

2020年にBundgaad-Nielsenらは、自閉症とADHDの腸内フローラの報告をまとめて、自閉症でβ多様性の違いが認められたが、他には明確な一致した違いは観察さえなかったことを報告しました。

2013年にKangらは、自閉症の子供の腸内細菌叢では、多様性が低下しており、Prevotella、Coprococcus、Veillonellaceaeが少ないことを報告しています。

2019年のLiuらは、2013年のKangの結果と同じで、多様性の低下、β多様性の変化(健常者と多様性が異なっていること)、ビフィズス菌、ブラウティア、ダイアスター、プレボテラ、ベイロネラトリシバクターが一貫して減少し、ラクトバチルス、バクテロイデス、デスルフォビブリオクロストリジウムが健常者と比較してASD患者で増加したことを報告しました。

諸説ありますがまとめると、「腸内細菌叢の多様性の低下とプレボテラの減少」が上げられます。

腸内フローラの多様性は、多種類の食物、特に多種類の水溶性食物繊維と関係しています。

プレボテラは、食物繊維を多く食べているアフリカ人や東南アジア人の腸内に多く存在すると言われています。

プレボテラは免疫とも密接に関係しており自閉症の免疫調整不全とも合致します。

腸内フローラを決める最大要因は食事です。

自閉症の腸内フローラの改善には、出来るだけ多種類の野菜をたくさん摂って、腸内フローラの多様性を上げて、プレボテラを増やしていく方法があります。

積極的に食べるべき食材は、タンパク質と野菜です。

土壌の貧困化と食べ物の貧困化が、腸内フローラの貧困化につながっています。

2021年にYapらは、247人の自閉症児の腸内フローラを解析して、制限された関心などの自閉症の特徴は、多様性のない食事に関連すること、その多様性の少ない食事は、微生物叢のアルファ多様性の低下と関連すること、Romboutsia timonensisは、自閉症の診断に関連する唯一の分類群であったことを報告しました。自閉症によく見られる偏食と腸内フローラの関連を考察しました。