ピロリ菌

2018年にBravoらは、ピロリ菌に対する興味深い総論を発表しています。

ピロリ菌感染は古典的にはさまざまな胃腸疾患に関連していると言われてますが、これらの胃腸疾患はピロリ菌に感染した人々のごく一部でのみ発生し、ピロリ菌感染が胃腸疾患の明らかな兆候を誘発することなくヒト宿主に頻繁に存続することが知られています。

大人のピロリ菌の保菌者は約50%ですが、胃がんの発症者は1%以下と言われています。ピロリ菌の感染率は、過去50年で半減していますが、胃がんの発症率はほぼ横ばいです。

またピロリ菌は、他の様々な疾患にも関連しており、健康に有益な役割を果たすことが示唆されています。

下図はピロリ菌と身体疾患との関係を示していますが、緑は有益な役割、赤は有害な役割を担うことを示しています。

小活:ピロリ菌は胃の細菌叢を形成するだけでなく、体のさまざまな部位でマイクロバイオームの変化を引き起こします。その結果として、宿主の免疫学的状態に強い影響を及ぼします。

ピロリ菌は、体内のマイクロバイオームの多様性の一員であり、主に過剰な免疫反応を抑制する役割を担っています。

1982年に発見されて、2005年にノーベル賞が授与されて、根絶療法がガイドラインに組み込まれたヘリコバキターピロリですが、今後はこの治療は、萎縮性胃炎のある人だけに限定するなど、見直される必要があると考えています。

抗生物質の使用などによって、ピロリ菌感染率は戦後激減していますが、胃がんの発症率はほぼ横ばいで、アレルギー疾患、自己免疫疾患などの現代病は急増しています。

現代病の特徴は、マイクロバイオームの多様性の低下なので、多様性を低下させる抗生物質の使用、食事の現代化を見直していかないといけないと考えています。