ホットフラッシュとプロゲステロン

これまでは、閉経後の女性のホットフラッシュ、ほてり、のぼせ、寝汗は血管運動神経の症状と言われており、中年女性のエストロゲンの不足で起こるとされてきました。

一方で現代社会は環境エストロゲンに溢れており、エストロゲン不足は起こりにくい状態になっています。

リー博士によると、中年女性のホットフラッシュはエストロゲンの投与ではなくて、天然プロゲステロンクリームで改善することもあると言われています。

閉経期になると、エストロゲンの分泌量は40〜60%に減少します。一方でプロゲステロンはほとんどゼロになることからも、ホットフラッシュの治療にプロゲステロンを使う方が理にかなっています。

2019年にChiangらは、798人の中年女性のほてり症状と血中エストラジオール、プロゲステロン、テストステロンの関係を調べました。

プロゲステロンの変動の増加が、ほてりの頻度の減少、重症度の低下と関連していました。

プロゲステロンの変動が、ほてりの最も重要な指標であることを指摘しました。

この論文における変動とは分散のことです。個々人が複数回、ホルモンの測定を行ってます。分散とは数値データのばらつき具合を表すための指標です。ある一つの群の数値データにおいて、平均値と個々のデータの差の2乗の平均を求めることによって計算されます。こうすることによって、平均値から離れた値をとるデータが多ければ多いほど、分散が大きくなります。

1999年にLeonettiらは、ホットフラッシュに対して天然プロゲステロンクリームを使うランダム化比較試験を行って、有効性を報告しています。

2003年にWrenらは、ホットフラッシュに対して天然プロゲステロンクリームを使うランダム化比較試験を行って、有効性を認めなかったことを報告しています。

2009年にBensterらは、ホットフラッシュに対して天然プロゲステロンクリームを使うランダム化比較試験を行って、有効性を認めなかったことを報告しています。

2012年にHitchcockらは、閉経後のほてりと寝汗に対して経口プロゲステロンを使うランダム化比較試験(133人)を行って、有効性を報告しています。

2017年にSantoroらは、早期閉経期の女性の血管運動症状(ほてり、寝汗、不眠症、過敏症)をランダム化比較試験を行って、経口エストロゲン+経口プロゲステロンと経皮エストラジオール+経口プロゲステロンが、同じようにほてりと寝汗を有意に改善したことを報告しています。

2008年にHachulらは、閉経後の女性の睡眠に対するエストロゲンとプロゲステロンの効果を、ランダム化比較試験(65人)を行って調べました。周期性四肢運動、ほてり、歯ぎしりは、エストロゲン単独よりプロゲステロンとの併用の方が効果的であったことを報告しています。

2012年にPriorらは、閉経後早期の重度の血管運動症状に対して経口プロゲステロンを投与して、有効性および、中止後のリバウンド症状が問題ないことを報告しました。

2018年にPriorは総論にて、経口微粉化プロゲステロン(プロゲステロン)がほてりや寝汗(血管運動症状、VMS)に効果的であり、睡眠を改善し、閉経期の女性(最後の月経から1年以上経過している)で安全であると総括しました。結論として、プロゲステロンはうつ病や発癌などの副作用がなく、血管運動症状を効果的に治療し、睡眠を改善する唯一の治療法であると総括しています。

2016年にSmithらは、中年期の女性におけるほてりの持続時間およびほてりの重症度のピークの時間とホルモンの関係を調べ、これらとプロゲステロンが関連していることを報告しました。

2008年にSchusslerらは、閉経後の女性の不眠にプロゲステロンが有効であることを報告しました。

2020年にFanらは、閉経期の血管運動症状は低エストロゲン自体が原因ではなく、高い脳内のエストロゲン曝露とそれに続くエストロゲン離脱が原因です。プロゲステロンは、閉経前の数年間のさまざまなエストロゲンの作用をを相殺します。閉経周辺期/閉経期のプロゲステロン療法は、エストロゲン療法の中止に関連する離脱性の血管運動症状の増加のリスクなしに、ほてりや寝汗を効果的に減少または予防する可能性があることを報告しました。この仮説をパラダイムシフトと表現しています。