アルツハイマー病と食事

1993年にGiemらは、約3000人の食事について調べた結果、肉を摂取する消費者は、菜食主義者と比べて2倍認知症になりやすいことを報告しました。

2006年にDaiらは、野菜と果物のジュースが、アルツハイマー病のリスクを低下させることを報告しました。

2007年にGateauら、フランスの8085人の高齢者の食事を分析して、果物や野菜、魚、オメガ3が豊富な油を頻繁に摂取すると、特にApoEε4非保因者の間で認知症やアルツハイマー病のリスクが低下する可能性を報告しました

2012年にLoefらは、過去9つの論文を総括して、果物ではなく野菜の消費量が多いと、認知症や認知機能低下のリスクが低下することを報告しました。

様々な植物化学物質がアルツハイマー病に対して保護効果を持つことが報告されています。(2010年のKimら2017年のDOnofrioら2017年のOmarら

→野菜と果物の摂取は保護因子。

2010年にGuらは、253人を9年間フォローして、食物のアルツハイマー病のリスク低下との関係を調べ、サラダドレッシング、ナッツ、魚、トマト、家禽、アブラナ科の野菜、果物、濃い緑の葉野菜の摂取量が多く、高脂肪乳製品、赤身の肉、臓器肉、バターの摂取量が少ないことが特徴であることを報告しました。

2013年にHuらは、アルツハイマー病と栄養について総括して、抗酸化物質、ビタミンB群、ポリフェノール、および多価不飽和脂肪酸の栄養補助食品はアルツハイマー病に有益であり、魚、果物、野菜、コーヒー、および軽度から中程度のアルコールの摂取はアルツハイマー病のリスクを低減することを報告しました。

2014年にSolfrizziらは、アルツハイマー病と食事療法について総括して、飽和脂肪酸の上昇は、加齢に伴う認知機能の低下と軽度認知障害(MCI)に悪影響を与える可能性があります。さらに、魚の消費、一不飽和脂肪酸および多価不飽和脂肪酸(PUFA、特にn-3 PUFA)と、認知機能低下および認知症のリスクの低下との関連の可能性を示唆しています。

認知機能の低下と血管性認知症(VaD)のリスクの増加は、ミルクや乳製品の消費量の低下と関連していることがわかりました。ただし、バターと生クリームは、高齢者の認知機能低下に関連している可能性があります。

軽度から中等度のアルコール使用は、偶発的な認知症およびADのリスクの低下と関連している可能性がありますが、VaD、認知機能低下および認知症前症候群の場合、現在の証拠は保護効果を示唆するだけです。果物と野菜の摂取に関しては、認知機能の低下、認知症、ADに対するこれらの主要栄養素の保護的役割を裏付けています。

地中海式食事療法(MeDi)は、最近の前向き研究は、地中海型の食事へのより高い順守が、より遅い認知機能低下、MCIからADへの進行のリスクの減少、ADのリスクの減少、およびAD患者のすべての原因による死亡率の減少と関連している可能性があるという証拠を提供しました。これらの発見は、MeDiの順守がADのリスクだけでなく、認知症前症候群とそれらの顕性認知症への進行にも影響を与える可能性があることを示唆しました。

2018年にScarmeasらは、認知機能の障害を防ぐ栄養について総括して、特定の栄養素(例えば、葉酸、フラボノイド、ビタミンD、および特定の脂質)または食品(例:シーフード、野菜、果物、および潜在的に適度なアルコールとカフェインの消費)の保護作用について報告しました。

2019年にRomanらは、地中海式ダイエットで摂取する野菜と果物由来のポリフェノールとフラボノイドは、2型糖尿病、心血管疾患、脳卒中、癌の予防に役立つ抗酸化作用と抗炎症作用があるため、地中海式食事で重要な役割を果たします。果物と野菜からのポリフェノールは、アルツハイマー病の動物モデルにおけるタウの過剰リン酸化とベータアミロイド凝集を調節します。

2018年にBertiらは、アルツハイマー病のバイオマーカーを経時的に調べて、地中海式ダイエットを続けることはアルツハイマー病の発症リスクを下げることを報告しました。

2020年にBaranowskiらは、西洋型食生活の成分(飽和脂肪酸と単純な炭水化物)は脳に有害であり、認知を損ないます、アルツハイマー病の病状を悪化させること、地中海式食事の成分(多価不飽和脂肪酸、ポリフェノール、抗酸化物質)は神経保護作用があること、運動はアルツハイマー病のリスクを大幅に減らすことを総括しました。

2021年にBallariniらは、地中海式ダイエットが、記憶力の低下と脳萎縮に対する保護因子として働くことを報告しました。

→地中海式ダイエットがアルツハイマー病に保護的に働く要因は、野菜と果物の植物化学物質である。

MIND食は、高血圧を防ぐための食事法のDASH食と地中海式ダイエットのハイブリッドであり、神経変性遅延食事療法(Mediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay )です。

2015年にMorrisらは、MINDダイエットが加齢に伴う認知機能の低下を防ぐことを報告しました。

2015年にMorrisらは、MINDダイエットがアルツハイマー病の発症リスクを低下させることを報告しました。

2021年にKheirouriらは、MINDダイエットは、認知を改善するために、地中海ダイエット、高血圧を止めるためのダイエットアプローチ、親菜食主義者およびバルト海ダイエットを含む他の植物が豊富なダイエットよりも優れていたことを総括しまいた。

→MIND食はアルツハイマー病に対してより有効である。

2013年にGardnerらは、アルコールとアルツハイマー病とのこれまでの報告を総括して、7つの記事が飲酒がADのリスクを低下させることを示唆し、3つの研究が飲酒がADのリスクの増加につながることを発見し、さらに9つの報告されたアルコールはADに影響を与えませんでした。現在のエビデンスベースを考慮すると、ADを発症するリスクを減らす手段としてアルコールを使用すべきではありません。

2021年にWuらは、適度なアルコール摂取はアルツハイマー病(AD)の保護的修飾因子ですが、大量のアルコール摂取と禁酒は認知症のリスクを高めることを指摘しています。

→適度なアルコールは保護因子。

2002年にGateauらは、魚の週1回以上の摂取がアルツハイマー病のリスクを低下させるが、肉の消費とアルツハイマー病のリスクが相関しないことを報告しました。

2007年にGateauら、フランスの8085人の高齢者の食事を分析して、果物や野菜、魚、オメガ3が豊富な油を頻繁に摂取すると、特にApoEε4非保因者の間で認知症やアルツハイマー病のリスクが低下する可能性を報告しました。

2009年にDangourらは、イギリスの867人の高齢者の食事を分析して、魚の摂取量が多いほど、後年の認知機能が向上することを報告しました。

2005年にHuangらは、多脂魚を週2回以上摂取すると認知症およびAPOE ε4非保有者のアルツハイマー病のリスクが下がることを報告しました。

2003年にMorrisらは、シカゴの815人の高齢者の食事内容を分析して、週に1回以上魚を摂取した参加者は、年齢やその他のリスクを調整したモデルで、魚をほとんどまたはまったく食べなかった参加者と比較して、アルツハイマー病のリスクが60%低くなることを報告しました。

2003年にMorrisらは、トランス脂肪酸および飽和脂肪酸の摂取が、アルツハイマー病のリスクを上げることを報告しました。

2009年にFotuhiらは総論にて、これまでに実施された臨床試験では、加齢に伴う認知機能の低下を減らすために長鎖オメガ-3脂肪酸の消費を支持していますが、一方でアルツハイマー病の二次予防または治療に対するオメガ-3脂肪酸の利点は示されていないことを報告しました。

2009年にDevoreらは、オランダの5395人を約10年間追跡調査して、適度な魚およびオメガ3脂肪酸の摂取とアルツハイマー病の発症リスクと関連がないことを報告しました。

2017年にCanhadaらは、オメガ3脂肪酸の補給とアルツハイマー病についうて、過去7つの論文を総括して、アルツハイマー病の治療におけるオメガ-3脂肪酸の補給を支持しないと報告しました。

2020年にTomitaらは、多価不飽和脂肪酸(オメガ3およびオメガ6)とアルツハイマー病との関係についての大規模調査を行い、血漿の多価不飽和脂肪酸を測定して関連がないことを報告しました。

2020年にShintaniらは、アルツハイマー病患者にオメガ3サプリメントを補給した6つの研究を総括して、有効性を認めないことを報告しました。

→近年は、オメガ3脂肪酸のアルツハイマー病に対する保護効果は否定されている。

2002年にLuchsingerらは、カロリーと脂肪の摂取量が多いと、アポリポタンパク質Eϵ4対立遺伝子を持つ個人のアルツハイマー病のリスクが高くなる可能性があることを報告しました。

2013年にDhurandherらは、アルツハイマー病の動物モデルで、空腹が認知機能を改善することを報告しました。

カロリー制限がサーチュン遺伝子を活性化して、アルツハイマー病に対して保護的に働くことが、動物実験で報告されています。(2005年のPatelら2006年のQinら

2019年にCremoniniらは、アルツハイマー病の予防における食事法について考察して、断食の有効性を指摘しています。

→カロリー制限や断食は、保護因子。

2002年にYamadaらは、魚よりも肉の消費の多い日系ブラジル人157人について分析して、アルツハイマー病の発症率が高いことを報告しました。

2002年にGateauらは、魚の週1回以上の摂取がアルツハイマー病のリスクを低下させるが、肉の消費とアルツハイマー病のリスクが相関しないことを報告しました。

2009年にAlbaneseらは、ラテンアメリカ、中国、インドなどにおいて、魚と肉の消費量と認知症との関連について調べ、魚の消費量と認知症の間の用量依存的な逆相関および、一部の国でのみ肉の消費との相関を報告しました。

2019年にNgabiranoらは、フランスの6000人弱の食事を12年間分析して、肉の消費量が非常に少ないと認知症とアルツハイマー病の長期リスクが高まること、魚、生の果物、または調理された果物と野菜の消費と認知症またはアルツハイマー病のリスクとの間に関連は見られないことを報告しました。

2021年にZhangらは、英国の50万人弱の肉の消費と認知症とのリスクの関係を調べて、加工肉の摂取はすべての認知症のリスクの増加と関係し、未処理の肉の摂取はすべての認知症のリスクの低下と関連することを報告しました。

→加工肉ではない肉の摂取は保護因子。魚から肉を推奨する流れになっている。