冬季うつ病に光療法
まとめ:光療法は冬季うつ病だけでなく、朝が起きられない傾向がある人にも有効です。セロトニン系の代謝を十分に行うために、タンパク質、ビタミン、ミネラルの摂取が前提となります。
冬季うつ病に対する光療法は、当院では10年以上前に一時期実施しておりましたが、クリニックで実施するのではなくて、自宅で毎朝に一定期間は光療法を実施しないと効果がありませんので、現在は中止しています。
高照度光療法(光療法)とは、1日のうちのある時間帯に短時間、患者を高照度光に暴露させる治療法です。
高照度とは、2000-2500Lux以上の照度のことです。現在は10000ルクスが主流です。高照度光がヒトの概日リズムを変化させることが明らかになって以来、時間生物学を理論背景として、季節性うつ病, 睡眠相後退症候群や非24時間型睡眠覚醒障害などの概日リズム睡眠障害、老人の睡眠障害などの疾患 に対しての有効性が報告されています。
目を介して作用する光は、松果体のセロトニンN-アセチルトランスフェラーゼの暗所誘導活性を約90秒で減少させます。この結果として、松果体セロトニンの濃度の急速な増加(1972年、Kleinら)とメラトニン濃度の低下が起こります。
反対に、セロトニンN-アセチルトランスフェラーゼの暗所誘導活性のために、夜遅くまでゲームなどをして光を浴びていると、メラトニンが生成出来ないために夜間入眠が出来なくなります。(2011年、Gooleyら)
小括:セロトニンN-アセチルトランスフェラーゼの暗所誘導活性から考えると、朝は光を浴びて、夜は暗くすることが、セロトニンとメチオニンのバランスを調整する上で重要です。
光によるメラトニン抑制効果を、200から3000ルクスで比較したところ、光の強度と相関することが報告されています。(1987年、Mclntyreら)
脳内のセロトニンを増やす方法として、光刺激の他には、運動、食事が上げられます。(2007年、Youngら)
光療法では、もともとは2500ルクスで2〜3時間の照射を行っていましたが、コンプライアンスが下がるため、最近は10000ルクスを短時間照射する方法が主流です。10000ルクスの光療法の副作用としては、70人中32人が、頭痛と目または視力の問題などを訴えました。ほとんどすべてが軽度で、一過性であり、治療を妨げませんでした。(1998年、Koganら)
また、光療法を開始した初期に軽躁になることがあるので注意が必要です。(2014年、Termanら)
■光療法とビタミンD?
夏に太陽光を浴びるということは、紫外線を浴びてビタミンDが活性化されることを意味します。
季節性感情障害の治療で使用するランプは、紫外線がフィルターで遮断されていますので、ビタミンDの活性化は出来ません。
ビタミンDが低レベルで冬に多いことが知られており、冬季うつ病の原因となることはよく知られています。(2011年、Parkerら)
人間の臨床研究は、低レベルのビタミンDが質の悪さと短い睡眠時間と相関していることを示しています。ただし、ビタミンDレセプターが睡眠調節に関与する脳領域で発見されており、ビタミンDは睡眠と覚醒のサイクルの調節に関与していると言われています。(2019年、Muscogiuriら)
小括:ビタミンDの面から見ると、ビタミンDのサプリの摂取および朝の散歩などで太陽光線を浴びる方法が有効です。