ワーキングメモリと発達障害

まとめ:発達障害ではワーキングメモリーに問題がありますが、ドリル的なワーキングメモリーのトレーニングの治療効果は認められていません。

ワーキングメモリーは、長期記憶から引き出した情報を短期記憶に留めて、何らかの作業を実行する「脳の黒板」のようなものです。

こども発達支援研究会によるとワーキングメモリーは、言語性と視空間性に分けられ、それぞれがさらに短期記憶とワーキングメモリーに分けられます。

ワーキングメモリと発達障害の関係は、ASDでは軽度の言語性短期記憶の障害、ADHDでは言語性および視空間性ワーキングメモリーの障害が指摘されています。

最新の総論によると、ASD(2019年、Habibら)およびADHD(2013年、Aldersonら)では、言語性および視空間性のワーキングメモリーの両方で障害があることが総括されています。

ワーキングメモリーのトレーニング法は沢山のドリル的な方法が提唱されています。

しかしながら、ワーキングメモリーのトレーニングはASDに対しても(2021年、Wagleら)、ADHDに対しても(2018年、Koflerら)効果がなかったことが報告されています。

トレーニングが有効でなかった原因としては、発達障害とワーキングメモリーの障害を起こす共通の根本原因が存在する可能性や、ドリル的なワーキングメモリーのトレーニングの方法の問題が指摘されています。

ワーキングメモリネットワーク(working memory network、WMN)は、情報を保持しながら操作を同時に行うワーキングメモリや、プランニング、抑制、更新、注意の配分といった実行系機能に関係します。 WMNは呼び方やどの領域を含めるかに関して研究者間で違いが見られ、セントラルエグゼクティブネットワーク(central excecutive network、CEN)、前頭−頭頂ネットワーク(Frontal-Parietal Network : FPN)、実行系ネットワーク(Executive network)などとも呼ばれます。