トゥレット症候群の最新情報2022年

■口腔内スプリントによる治療

トゥレット症候群治療推進学会でマウスピースによる治療が推奨されています。

これはAnthony Sims先生が開発した治療法で、チック以外にもジスキネジアやジストニーなどの運動障害にも有効です。

マウスピース(口腔内スプリント)を装着したトゥレット症候群の22名患者さんのチックの変化を装着前後で観察し、チック症状が軽減することを報告しました。(2019年、村上ら

マウスピース(口腔内スプリント)を装着し咬合すると、閉口筋筋紡錘に生じる筋紡錘感覚が無意識下で増強されます。筋紡錘感覚が大脳で情動機能を担っている島皮質に伝達されることが、動物実験で明らかになっており、この筋紡錘感覚の増強が、トゥレット症候群のチックを減少させた可能性が考察されています。(2019年、Research Osaka University

ランダム化比較試験での有効性も報告されています。(2021年、Bennettら

■腸内フローラ移植

中国でトゥレット症候群の子供に対する糞便微生物移植の著効例(患者のYGTSS総チック重症度スコアは31から5に低下し、運動重症度スコアは16から5に低下し、発声重症度スコアは15から0に低下した)が報告されています。(2017年、Zahoら

その後5名に糞便微生物移植が実施されて、4人の患者(4/5)は、8週目にFMT(YGTSS-TTS減少率> 25%)肯定的に反応しました。(2020年、Zahoら

TGTSS(Yale Global Tic Severity Scale、チック重症度の尺度)は、運動と音声をそれぞれ記録していき、その合計で重症度を判断します。運動25、音声25で最大50です。目安としては、35以上であれば重度と考えられています。

■ニューロフィードバック

EEGニューロフィードバックによる改善例が報告されています。(1986年のTansey2011年のMesserotti Benvenutiら2013年のZhuoら

EEGニューロフィードバックのSMRトレーニングによって、YGTSSスコアは119から38に下がった症例が報告されていますが、トゥレット症候群は不安定な症状なので、短期間の良好な結果がその後どうなるか予測するのは難しいと考察されています。(2008年、Chunら

EEGニューロフィードバックADHDの実行機能の改善に有効であるのと同様に、トゥレット症候群に対しても有効であることが考察されています。ADHD症状がトゥレット症候群に現れる場合の実行制御機能の欠陥は、皮質-視床-線条体回路の病態生理学的プロセスを反映している可能性が高く、トゥレット症候群の運動症状の根底にある可能性が指摘されています。(2015年、Farkasら

fMRIによるニューロフィードバックの有効性が報告されています。平均エールグローバルチック重症度スケール合計チックスコアは、ベースラインの25.2±4.6からニューロフィードバック条件のエンドポイントの19.9±5.7に、偽のコントロール条件の24.8±8.1から23.3±8.5に減少しました。(2020年、Sukhodolskyら

皮膚電気バイオフィードバックによるランダム化比較試験では有意な結果は出ませんでした。(2014年、Nagaiら

■ 脳深部刺激療法

脳深部刺激療法は、トゥレット症候群の185人の患者の症状の改善だけでなく、重要な有害事象とも関連していたことが総括されています。平均(SD)合計エールグローバルチック重症度スケールスコアは、ベースラインの75.01(18.36)から手術後1年の41.19(20.00)に改善しました(P  <.001)。有害事象の発生率は35.4%(56/158例)で、頭蓋内出血は2例(1.3%)、感染は4例、5例(3.2%)、鉛の外植(lead explantation)は1例(0.6%)でした。最も一般的な刺激誘発性の副作用は構音障害(10 [6.3%])と知覚異常(13 [8.2%])でした。(2018年、Martinez-Ramirezら