多嚢胞性卵巣症候群とインスリン抵抗性

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS、polycystic ovarian syndrome)は、排卵しにくくなる疾患で、女性の20〜30人に1人の割合でみられます。排卵されない卵胞は卵巣にとどまるため、超音波検査で見ると、たくさんの卵胞を認めることから多嚢胞性卵巣と呼ばれます。

PCOSの内分泌的特徴は、アンドロゲン(男性ホルモン)過剰が病態の中心にあり、これがインスリン抵抗性(グルカゴン過剰)によって惹起されると考えられていますが、メカニズムはよく分かっていません。(2021年、Moghettiら

PCOSは2型糖尿病だけでなく(2012年、Gambineriら)、1型糖尿病にもよく合併することが報告されていること(2016年、Escobar-Morrealeら)から、高インスリンではなくグルカゴン過剰が問題です。

小括1:PCOSの病態は、グルカゴン過剰→アンドロゲン過剰です。このため、男性型脱毛を併発することがあります。

グルカゴンの分泌を抑制するものの中で、ポイントになるのがグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)です。

POCSに対してGLP-1アゴニストの治療効果が報告されています。(2021年、Maら

GLP-1受容体の発現とその機能はアンドロゲンによって調節されています。(2019年、Zhu

アンドロゲンはプロゲステロンから代謝合成されますが、PCOSではプロゲステロンが低値となって黄体機能不全を起こしています。プロゲステロン受容体膜成分1は、膵臓β細胞におけるGLP-1受容体複合体の機能部分であることが報告されています。(2014年、Zhangら

小括2:PCOSの病態は、GLP-1低下→グルカゴン過剰→アンドロゲン過剰です。

PCOS発症の原因となるインスリン抵抗性に対して、腸内細菌叢の役割が考察されています。(2020年、Heら

腸内細菌のエサとなる水溶性食物繊維の不足が、腸内フローラのディスバイオーシスの主な原因です。

まとめ:PCOSの栄養療法としては、GLP-1の分泌を促してグルカゴンを抑制するために、食物繊維、糖質、噛むこと、頻回の食事です。

糖質と言っても、精製糖質は問題です。

複合炭水化物の摂取が基本です。