腎機能とタンパク質

まとめ:タンパク質を取ると腎臓を悪くするという俗説は、現在はほぼ否定されています。

腎機能低下があっても、少なくとも0.8g /kg/日の食事性タンパク質摂取量を維持することが提唱されています。

北里大学の山田悟先生が、蛋白質制限は患者に害をなす医療?という提言をされたので、関連論文を調べて見ました。

2型糖尿病(T2D)では、炭水化物制限に焦点が当てられています。ただし、炭水化物の摂取量を減らすと、食事性タンパク質の割合が高くなるため、慢性腎臓病(CKD)を併発している人にとっては不利な結果をもたらす可能性が危惧されています。

2022年、Oosterwijkらは、T2Dの患者では、無制限の食事性タンパク質摂取は、腎機能低下のリスクの増加とは関連していませんでした。食事によるタンパク質摂取は、腎機能の低下と逆相関しており、1.08g/kg/日未満の蛋白質摂取では腎機能が悪化することを指摘し、2型糖尿病の腎機能低下に高蛋白質食が保護的に働くことを報告しました。

CKDの有無にかかわらず、栄養失調やサルコペニアになるのを防ぐために、少なくとも0.8g /kg/日の食事性タンパク質摂取量を維持することを提唱しました。(2022年、Oosterwijkら

2022年にHeymanらは、Oosterwijkらのこの報告に対して、「低タンパク食が腎保護効果がないという結果であるが、高タンパク摂取による腎転帰の改善のメカニズムが説明出来ていない」ことを指摘しました。他の未確認の要因が高タンパク食で有利である可能性があり、CKDの進行が遅い患者では、併用されているレニン-アンジオテンシン系遮断薬やSGLT2阻害薬が、腎機能に対して保護的作用する交絡因子となっている可能性を言及しました。

1160人地域在住の高齢者を3年フォローした結果、タンパク質摂取量はeGFRの低下とは関連がなく、高齢の慢性腎臓病患者の場合、タンパク質および動物性タンパク質の摂取量はeGFRの維持により有益でした。結果は、慢性腎臓病患者を含むの高齢患者に対してタンパク質摂取を制限すべきではないと結論しています。(2022年、Sekiguchiら

RNPC©プログラム(中程度の高タンパク、低炭水化物ダイエット)に参加した4394人が、減量および腎機能の改善を認めました。(2022年、Trucheら

米国糖尿病学会(ADA)は、2008年版でタンパク質制限ガイドラインを提案しました。その後、エビデンスが不十分なため、このコメントは2013/2019版で削除されました。最近の報告をまとめると、植物性タンパク質の摂取は推定糸球体濾過率(eGFR)の低下に保護効果があり、動物性タンパク質の摂取にはメリットもデメリットもないとされています。(2021年、Katoら

たんぱく質制限を緩和する場合、1.5g /kgBW/日を超えるたんぱく質摂取を避けるのが安全です。end-stage kidney disease(ESKD)のリスクが高いCKD患者では、0.8 g /kgBW/日がタンパク質摂取の重要なポイントになる可能性があります。(2021年、Isaka

1374人の高齢白人女性を対象にした研究で、植物由来のタンパク質が豊富な食事を摂取している年配の女性は、腎臓機能の低下が遅くなりますが、動物性タンパク質にはこの保護効果はないことが報告されています。(2021年、Bermier-Jeanら

低炭水化物ダイエット(LCD)に従う2型糖尿病(T2D)の人々は、食事からのタンパク質摂取量を増やす可能性があります。食事性タンパク質は腎機能を調節する可能性があるため、腎疾患におけるその役割については議論があります。2型糖尿病患者向けのLCDは、多くの腎臓および心血管の危険因子を改善することを総括しました。(2021年、Unwinら