内的家族システム療法〜セルフ主導

内的家族システム療法(IFS)の唯一の目的は、クライエントがセルフのエネルギーにアクセスすること(セルフがパーツと繋がり、セルフの手のひらにパーツを包み込む)をサポートすることです。

多重人格障害や重度のトラウマを抱える方ほど、セルフのエネルギーにアクセス出来ない状態になっており、管理者と呼ばれる防衛者が前景に立って日常生活を営んでいます。セルフ主導でない状態です。

セラピストは、自分のセルフに留まること、パーツと議論・説得せずに、クライアントのセルフとパーツの橋渡し役として、ヒント、誘導、仲介に徹します。

セラピーの流れは、クライアントのシステムに導かれて行います。

迷ったら、セラピスト自身のセルフにアクセスして、インスピレーション(今その場に起きていることに好奇心を持って創造性を働かせます)に従って進みます。

IFSでのセラピストの資質としては、存在感、忍耐、粘り強さ、展望、遊び心の5つが提唱されています。

■セルフ主導ではないが、セルフの存在が時々出てくる場合

クライエントがセルフのエネルギーにアクセス出来るか(セルフとパーツの繋がりはあるか)調べるためには、「あなた(クライアント)は、パーツに対してどう感じますか?」と質問します。

答えが神の資質(好奇心、明晰さ、思いやり、穏やか、自信、勇気、創造性、繋がり)を持ったポジティブな内容であれば、パーツとセルフの繋がりは良好で、セルフのエネルギーにパーツがアクセス出来る状態です。→そのままそのパーツ(≒セルフ)とセラピーを続けます。

答えがニュートラルかネガティブであれば、アクセス出来ない状態です。

1.ブレンド解除して、セルフの出現を促す方法

そのパーツに対して、別のパーツ(怖がっているパーツ、批判的なパーツ、感謝できないパーツなど)がいると考えられるので、そのパーツを扱うか、そのパーツに「少し脇に寄ってもらえますか?」「ちょっと離れていてもらえませんか?」「そのことに気がついておいてくださいね。他の意見や見方はありますか?」「その考えはちょっと横に置いておいて、興味を持ってこの問題を見てみるとどうでしょうか?」「少しの間考えないで、ただ聞いていてもらえますか?」「少し休んで、スペースを開けてもらえますか?」と頼んでみます。(ブレンド解除)

神の資質を持つセルフが出てくるまで、ブレンド解除を続けます。

2.ブレンド解除せずに、そのままそのパーツとセラピーを続ける方法

ブレンド解除せずにそのまま、「あなたが出てきてくれて嬉しいです。私に何を知ってほしいですか?」、「もし〇〇パーツ(厄介なパーツ)が居なかったとしたら、〇〇さんはどうなっていたと思いますか?」と尋ねる方法もあります。

■セルフの存在が全く出てこない場合

完全にセルフ主導でない場合は、セラピストがセルフの代役をしばらく努めます。セラピストは神の資質(好奇心、明晰さ、思いやり、穏やか、自信、勇気、創造性、繋がり)を持って、クライエントと接します。

興味・好奇心→理解→受容→信頼→愛着と段階的に、セラピストとパーツが信頼関係を深めます。

セラピストのセルフとクライアントのパーツが繋がるようにします。

セルフ主導でない場合は、内的会話(セルフを通じてパーツと会話、トーキングスルー、三者会話)ではなく、ダイレクトアクセス(セラピストが直接パーツと会話、二者会話)を用いることになります。子供では、ダイレクトアクセスが一般的です。

ダイレクトアクセスを行っている間には、定期的にセラピストはクライエントのセルフに会話に参加してもらってはどうかと承認をパーツに求めるようにします。

■セルフの断片を見つける

防衛者がほとんど全面に出ていたとしても、セラピストとの会話の中で、セルフの神の資質(好奇心、明晰さ、思いやり、穏やか、自信、勇気、創造性、繋がり)が見え隠れすることがあります。

セラピストとの会話の中で、明らかな矛盾する内容が出てくることがあります。

現在ではなく、クライアントの過去の行動や言動で、セルフの神の資質を持った断片を探します。

クライエントの周囲との関わる人物の中で、セルフ的な神の資質を持って親切に接してくれた人のことを思い出してもらいます。

セルフの断片もない場合は、想像と創造でセルフをイメージする方法もあります。

防衛者の中や周囲で見え隠れしたセルフの資質の断片について、セラピストが指摘して、見つける、焦点を当てる、肉付けする、親しむ(IFSの6F)を行い、膨らまします。

セルフのようなパーツの非ブレンド化と似た手順に進みます)

「そのような面、考え、行動、モードなど(=セルフ)から見ると、今の〇〇さん(=パーツ)はどう感じますでしょうか?」ホワイトボードや紙で図示して会話するほうが分かりやすいです。

エンプティチェアを使って、膨らましたセルフの断片とパーツの対話を促して、二者の関係が進展するまで続けます。