カルニチン
(2019年7月22日の記事を加筆・修正しました)
まとめ:カルニチンはミトコンドリアへの脂肪酸の運搬(カルニチンシャトル)を行って、脂肪酸を分解を促進してATP産生を行うミトコンドリアをサポートします。最も研究されているミトコンドリア機能マーカーです。慢性疲労などの様々な炎症病態への効果が期待できます。
ラテン語の「肉」にちなんで名付けられたカルニチンは、100 年前に筋肉組織で発見されれました。(1905, Gulewitsh)
慢性疲労症候群においては、血清カルニチン濃度の低下が指摘されており、疲労とカルニチンとの関連で注目されています。疲労サプリとしても、カルニチンの重要性が示唆されています。
カルニチンは、生体内で脂質を燃焼してエネルギーを産生する際に、長鎖脂肪酸を燃焼の場であるミトコンドリア内部に運搬する役割を担っています。
カルニチンの脂肪酸の分解促進作用から、体重減少の効果を指摘する報告もあります。(2008,Cha)(2015, Wu)(2016, Pooyandjyo)(2020, Talenezhad)
一方で、その効果を疑問視する報告もあります。(2012, Nagata)
この脂肪酸は主に存在比率の多い長鎖脂肪酸であり、中鎖脂肪酸はカルニチンと結合せずにミトコンドリア膜を通過できることが知られています。
■ビタミン様物質で、アミノ酸から生合性される誘導体です。
カルニチンの合成のためには、補酵素・補因子としてビタミンC、ビタミンB6、ナイアシン、鉄が必要です。
■カルニチンと食物
体内には約20gのカルニチンがほとんど筋肉細胞に存在します。1日のカルニチン生合成推定量は10〜20mgであり、3/4は肉食により補給され、1/4は肝臓と腎臓で作られます。
「健康な小児および成人は、1日に必要なカルニチンを肝臓および腎臓でアミノ酸のリジンとメチオニンにより十分な量を合成するため、食物やサプリメントから摂取する必要はない」という報告もあり必須栄養素とはみなされず、摂取基準量などは設定されていません。
■アセチル-L-カルニチン、カルニチンに加えてアセチル基供与体としての効果を期待できます。
アセチル-L-カルニチン(Acetyl-L-Carnitine)はL-カルニチン(L-Carnitine)にアセチル基(CH3CO-)が結合したものです。アセチル-L-カルニチンは、血液脳関門を通過して脳内に到達しアセチルコリン量を増やします。つまり、アセチル受容体であるコエンザイムA(CoA)にアセチル基を転移させてアセチルCoAを生成させ、さらにそれがコリンに受け渡され、最終的にアセチルコリンが生成します。
また、ヒストンのアセチル化は、クロマチンの状態に影響を与え、遺伝子発現を促進する非常によく知られたエピジェネティックなメカニズムですが、アセチル化は、転写因子、転写コアクチベーター、核内受容体などの非ヒストンタンパク質の活性を調節します。
つまり、アセチル-L-カルニチンはカルニチンに加えて、アセチル基供与体として働き、神経成長因子(NGF)への作用から、慢性疼痛の治療などに有望であると考えられています。(2021, Sarzi-Puttini)