PCOSと自閉症

まとめ:PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)と自閉症の関連が指摘されています。PCOS治療を自閉症に応用できる可能性があります。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS, polycystic ovarian syndrome)は、卵巣で男性ホルモンがたくさん作られてるために排卵しにくくなる疾患で、女性の20〜30人に1人の割合(6〜8%)で発症します。女性の男性化により、月経周期が長くなる月経不順があり、不妊に繋がり、多毛、男性型脱毛、ニキビなどの症状が出現します。

■自閉症と男性ホルモン

54件の研究の分析から、自閉症の基準を満たす子供の男女比は、これまでに想定された 4:1 ではなく、むしろ3:1 に近いと結論されています。(2017, Loomes)

心理学的に、男性の脳は、共感(言語能力)よりも体系化(空間能力)の方が優れており、女性の脳は、反対の認知プロファイルとして定義されます。これらの定義を使用すると、自閉症は通常の男性のプロファイルの極端なものと見なすことができます。つまり、自閉症は「典型的な男性の脳の極端なもの」として概念化することができます。(2002, Baron-Cohen)

ASD の10から13歳の若者は、対照群と比較して唾液中のテストステロンの上昇を示しました。(2022, Muscatello)

大人の自閉症患者の唾液中のテストステロンと自閉症特性を調べる心理検査(AQテスト)の結果が相関することが報告されています。(2010, Takagishi)

■PCOSと自閉症のリスクの関連

まとめ:出生前の男性ホルモン(アンドロゲン)の過剰な曝露が自閉症の発症に寄与するという仮説があります。

出生前および新生児のテストステロンへの過剰な曝露が、社会的発達を含む人間の行動における性的二型性の因果的役割を持ち、特に自閉症スペクトラム状態の危険因子としての有力な候補であると主張します。(2006, Knickmeyer)

自閉症のアンドロゲン理論は、自閉症の一部は、胎児期のテストステロンレベルの上昇によるものであり、多くの自閉症特性と正の相関があり、社会的発達と共感と逆の相関があると提案しています。(2007, Ingudomnukul)

英国での研究で、自閉症の女性はPCOSのリスクが約2倍高く、PCOSの女性は自閉症の発症率も2倍高く、PCOSの女性は、自閉症の最初の子供を持つ確率が35%増加しました。(2018, Cherskov)

10の研究のメタアナリシスで、PCOSは、子孫のASDの1.66 倍の増加と関連していた、PCOS の女性は、ASD と診断される可能性が 1.78 倍高かった。(2019, Katsigianni)

スウェーデンの大規模研究では、母体の PCOS は、子孫の ASD のオッズを 59% 増加させました。 (2016, Kosidou)

7つの研究のレヴューで、PCOS のない母親から生まれた子供と比較した場合に、PCOS を持つ母親から生まれた子供は、ASD (RR = 1.46、95% CI: 1.26–1.69、I 2 = 64%) および ADHD (RR = 1.43、95% CI: 1.35–1.41、I 2 = 0%)のリスクが増加しました 。(2022, Abu-Zaid)

■PCOS治療薬による自閉症の治療の可能性

まとめ:PCOSの原因は精製糖質によるインスリン抵抗性なので、根治的治療は炭水化物の適正摂取です。

薬理学的介入も可能性があります。

スピロノラクトン投与後の自閉症の子供の客観的な臨床的改善を示す症例が報告されています。スピロノラクトンは、アルドステロン拮抗薬であり、カリウム保持性利尿薬ですが、実質的な抗アンドロゲン特性を有しています。(2007, Bradstreet)

出生前のアンドロゲン曝露は、アンドロゲン受容体シグナル伝達経路を介して子孫に自閉症様行動を誘発します。ベルベリンの出生前および出生後の両方の治療は、アンドロゲン受容体発現の抑制によってこの効果を部分的に回復します。ベルベリンはPCOSを介したASD患者の潜在的な臨床治療になる可能性があります。(2020, Xiang)

マウスの実験でのストレスによるアンドロゲン過剰を起こし社会的行動に影響を与えます。このモデルでの、ステロイドホルモンを調節するメトホルミンなどによる薬理学的介入により改善から、これを自閉症のモデルと適切な治療的介入として提案します。メトホルミンとスピロノラクトンの両方の安全性プロファイルを考えると、臨床的アプローチは人間でも実行可能かもしれません。(2021, Gasser)

新生児発育中のメトホルミン治療が、自閉症マウスの反復行動を減少させることから、メトホルミンによる早期介入が ASD の中核症状を治療するための有望な戦略を提供することを示唆しています。(2018, Wang)

自閉症患者に長期的にメトホルミンを投与した症例では、ステロイドホルモンは影響を受けましたが、自閉症行動は改善しませんでした。(2022, Gasser)