PCOS治療は栄養療法のまとめ

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の自然療法多嚢胞性卵巣症候群とインスリン抵抗性の記事を書きましたが、PCOSの栄養療法をまとめてみます。

まとめ:PCOSの栄養療法は、低インスリン・低グルカゴンダイエットです。精製糖質を避けて、複合炭水化物を1日3食摂取、食物繊維、噛むことです。糖質制限のレベルはロカボです。1日推奨タンパク質量の2倍の糖質量を3等分して1日3回摂るようにします。炭水化物の適正摂取がポイントです。

PCOSでは、インスリン抵抗性に関連して5α-レダクターゼ活性が増強されることがメタアナリシスで総括されています。(2017年、Wuら

5αレダクターゼ活性は空腹時インスリンと相関しており、インスリン抵抗性と関連することが指摘されています。(2008年、Tomlinsonら

PCOSではインスリン抵抗性(相対的、絶対的グルカゴン過剰)によって、①P450c17α-hydroxlaseの活性が上がりプロゲステロンの代謝が促進されること、②SHBG(sex hormone binding globulin)が減ることで遊離テストステロンが相対的に増えることで、男性ホルモンが優位となり、男性ホルモン過剰症状として、月経不順、無月経、にきびの増加、多毛などが出現してきます。(2017年、Condrelliら男性ホルモン卵胞の発育を抑制し、卵巣の外側の膜(白膜)を厚くすることによって排卵を妨げます。

PCOSは肥満との関係で議論されることが多いですが、PCOSは2型糖尿病だけでなく(2012年、Gambineriら)、1型糖尿病にもよく合併することが報告されていること(2016年、Escobar-Morrealeら)から、PCOSの女性の総脂肪量と体重だけに依存しているのではなく、アンドロゲン過剰に起因していることが指摘されています。(2017年、Condorelliら

肥満はPCOSの原因ではない可能性が高く、比較的痩せた集団でのPCOSの有病率が高いことが示されています。(2012, Legro)

PCOSの動物モデルでも、体重の変化ではなく、インスリン抵抗性とアンドロゲン過剰が発症の原因であることが指摘されています。(2015年、Hurlimanら

PCOSと体重およびインスリン・グルカゴンの関係性は以下になります。

インスリンとグルカゴンは、反対の生理作用を持っています。

PCOSのリスクとBMIとの関係は以下です。

以上からPCOS治療には、インスリンの過剰分泌による肥満にも、グルカゴンの過剰分泌による痩せにもならない、低インスリン・低グルカゴンダイエットを勧めます。

具体的には、低インスリンのために精製糖質を避けますが、低血糖にならないようにするために、ある程度は複合炭水化物を3食食べるようにします。糖質制限のレベルはロカボです。低グルカゴンのために、食物繊維を摂取することと噛むことを勧めます。