Dダイマー
まとめ:血栓症の指標であるDダイマーは、急性期の新型コロナ感染症の治療の指標です。回復後も一部の患者では上昇します。論文ベースでは、後遺症関連のデータはまだありません。
血栓症の指標であるD-ダイマーは、失血に対する防衛として血管損傷からの止血作用として形成されるフィブリン血栓から派生します。フィブリン塊に含まれるフィブリンは、血液凝固カスケードとして知られる複雑なプロセスを経て産生されます。フィブリンはこのカスケードの最終過程で、構造内にD-ドメインと呼ばれる可溶性の血漿蛋白を含むフィブリノゲンから形成されます。
Dダイマーは、フィブリンが溶解された時に発生しますが、Dダイマーが高いということは、たくさん血栓が溶かされている=たくさん血栓が存在している状態である事を意味します。
D-ダイマー (DD フラグメント + E フラグメント) は可溶性複合体であり、細網内皮および腎経路によって除去されるまで血漿中を循環します。血漿中を循環する D ダイマーの半減期は 8 時間であり、血栓形成後わずか 2 時間で血中に検出できることは注目に値します。D-ダイマーの形成は、凝固および線溶イベント中に発生する架橋フィブリン分子の生成および分解中にのみ発生します。したがって、D ダイマー分子は、これらのイベントの直接的なマーカーとしてだけでなく、血栓活性の間接的なマーカーとしても機能します。 (2022, Nasif)
D-ダイマーが高い値を示していることは、数日前に体内で血栓が出来たということを示しています。Dダイマーが基準値よりも高値であるということは、体内で現在進行形で血栓形成傾向であることが推測されます。また、D-ダイマーの値がどんどん下がり、正常値に近づいていれば、溶かすべき血栓が小さくなっていることを示します。
D-ダイマーはフィブリンの形成と分解のバイオマーカーであり、その上昇は身体のどこかで異常な血液凝固が起こっていることの決定的な証拠です。(2022, Fazio)
急性期の新型コロナ感染症の重症例では、Dダイマーが高値になることがメタ解析で報告されています。(2020, Paliogiannis)
軽度から中等度の新型コロナ感染症患者が、完全な臨床的回復、健康状態の回復、鼻咽頭スワブ、C 反応性タンパク質、白血球数、およびフィブリノゲン レベルの正常化した15日後においても、D ダイマーは 9 人の患者 (20%) で大幅に上昇したままでした。(2022, Fazio)
急性 COVID-19 感染の回復後およそ2 か月後において、ほとんどの患者で炎症マーカーやその他の凝固パラメーターが正常化したにもかかわらず、38 例 (25.3%) の患者で D ダイマーレベルの上昇が観察されました。(2021, Townsend)
入院歴のある新型コロナ感染症患者が退院後 6 週間の時点で、病棟患者の 32% と ICU 患者の 42% で D ダイマー値の上昇が見られました。(2021, Engelen)
COVID-19 から回復した患者の 15% で、COVID-19 から中央値で 3 か月後に D ダイマーの持続的な上昇が観察されました。これらの患者は、より重度の COVID を経験していました(2021, Lehmann)
新型コロナ感染症で急性期にD ダイマーのピーク値が大幅に上昇した患者では、退院後の 静脈血栓塞栓症を発症するリスクが高いことが報告されています。(2021, Li)
COVID-19 アデノウイルスベースのワクチンを受けた後の D ダイマー値の上昇は、ワクチン誘発性血小板減少症および血栓症 (VITT) の最も重要な予測因子の 1 つと言われています。(2022, Lippi)(2021, Sharifian-Dorche)
mRNAタイプの新型コロナワクチンは、DNAタイプのワクチンよりも、ワクチン誘発性血小板減少症および血栓症 (VITT) のリスクは低いことが知られています。(2022, Mohseni Afshar)