新型コロナワクチンと出血

まとめ:新型コロナワクチンによる出血(月経、子宮、皮膚など)が報告されています。血小板第4因子に対する一過性の自己抗体が出来ることが原因のひとつと考えられます。

新型コロナワクチン接種後の月経異常が多数報告されています。73の論文から14の論文(ワクチンの種類はDNA2、mRNA11、不活性化1)を選別した解析では、14件の研究から合計78,138人のワクチン接種を受けた女性がこのレビューに含まれました。これらのうち、39,759 人 (52.05%) がワクチン接種後に何らかの月経の問題を抱えていました。月経出血過多、子宮出血、月経過多は最も一般的に観察されました。ワクチン誘発性血小板減少症が原因である可能性があります。(2022, Nazir)

新型コロナウイルスに対して不活性化ワクチンを使った中国での調査では、ワクチン接種後の月経異常はほとんど観察されませんでした。(2022, Cheng)

サウジアラビアでの調査では、全体的な副作用はDNAワクチンがmRNAワクチンよりも重篤でしたが、月経異常に関しては逆の結果でした。Pfizer-BioNTech の 0.98% (18/1846) および ChAdOx1 ワクチン接種者の 0.68% (7/1028) で月経異常(周期遅延、出血過多、痛みの増加)でした。(2021, Alghamdi)

これまでにも、麻疹、肝炎、ジフテリアワクチンなどの他のいくつかのワクチンによるワクチン接種の結果として、ワクチン誘発性血小板減少症が報告されています。(2014, Perricone)

新型コロナウイルスに対するDNAワクチンによるワクチン誘発性免疫性血小板減少症および血栓症(VITT)が問題となっています。(2021, Makris)

VITTの特徴としては、接種後の5日から24日で発症して、血栓症(脳静脈洞血栓症および門脈血栓症が一般的)での死亡が多く、検査では、血小板数2万以下に減少、Dダイマー上昇、血小板第4因子(PF4)に対する自己抗体陽性となります。(2021, Pavord)

VITT および HIT (ヘパリン誘発性血栓症)関連の自己抗原である PF4 は、正に帯電したタンパク質であり、負に帯電したウイルス DNA、細菌細胞壁、または負に帯電したヘパリンに直接結合します。この結合体が異物として認識されるために、PF4の抗原性が誘導されて、PF4自己抗体が作られて、VITTが発症します。(2021, McGonagle)

mRNAワクチン接種後の血小板減少症でPF4抗体が陽性になった報告があります。(2022, Ling)(2022, Abou-Ismail)

VITT における血小板活性化抗 PF4 抗体は、90% を超える患者で一過性で、5週から28週で陰性になることが報告されています。(2022, Schönborn)

新型コロナウイルスに対するワクチンによる出血エピソード(皮膚、歯肉、鼻)が報告されています。DNAワクチンがRNAワクチンよりも高頻度で出血エピソードを発症しました。(2021, Trogstad)

新型コロナ感染症そのものでも血小板減少症は起こってきますが、これもPF4抗体の関与が考察されています。(2021, Goldman)

日本脳卒中学会、日本止血学会が「COVD-19ワクチン接種後の血小板減少を伴う血栓症の治療手引」を発表しています。日本ではほとんどDNAワクチンは使われていませんが、(DNAやmRNAのワクチンのタイプに関わらず)、抗PF4抗体の陽性率が100%になると記載されています。

新型コロナウイルスそのものも、スパイクタンパク質がACE2受容体に結合することによって、凝固系の活性化、線維素溶解の抑制、血管内皮細胞の損傷、マクロファージや好中球などの免疫細胞の血栓形成促進性変化など、複数の血栓炎症イベントが病態生理学に関与しており、血栓症や血小板減少症を起こします。(2022, Iba)