セファランチン
セファランチン (cepharanthine) は、ツヅラフジ科の植物タマザキツヅラフジから抽出したアルカロイドです。
タマザキ(玉咲)ツヅラフジは中国・台湾に自生する植物で、漢方の生薬「白薬子(ビャクヤクシ)」として知られています。
セファランチンは、その後1934年に近藤平三郎博士らによって、玉咲ツヅラフジから抽出分離されました。
1942年に日本の医薬品として承認され、現在は1995年の再評価の結果、効能 ・効果として「放射線 による白血球減少症、円形脱毛症・粃糠性脱毛症、滲出性中耳カタル、まむし咬傷」に適応症が改訂されました。
セファランチンは、万能薬と言えるような多彩な生理作用を持つことが総括されており、AMPK 活性化が主に NFκB シグナル伝達の阻害を通じて、ストレス/危険シグナルにさらされた細胞の抗炎症反応を促進することが主な作用機序です。(2019, Bailly)
NF-κB(エヌエフ・カッパー・ビー、核内因子κB、nuclear factor-kappa B)は転写因子(刺激に応じて、対象とするDNAのmRNAへのコピー(転写)を開始あるいは停止させるタンパク質の一群)として働きます。
NF-κBはストレスやサイトカイン、紫外線等の刺激により活性化されます。NF-κBは免疫反応において中心的役割を果たす転写因子の一つであり、急性および慢性炎症反応や細胞増殖、アポトーシスなどの数多くの生理現象に関与しています。
セファランチンは、ヒト毛乳頭細胞 (hDPC)を刺激して、血管内皮増殖因子(VEGF) の発現を増加させることにより、発毛を回復させることが示唆されています。(2021, Iwabuchi)
セファランチンは、NF-κB活性を抑制して、口腔扁平上皮癌細胞のアポトーシスを促進することが報告されています。(2007, Tamatani)
セファランチンは、放射線治療による白血球減少(1990, Ohta)だけでなく、抗癌剤による白血球減少にも有効で有り(1989, Saitou)、免疫調整作用が指摘されています。(2020, Rogosnitzky)
新型コロナウイルスおよび同種のウイルスに対して、セファランチンは主にウイルスの侵入と複製を低用量で阻害します。前臨床モデルで臨床的に承認された2406のドラッグリパーパス候補の中で最も強力なコロナウイルス阻害剤として特定されました。(2020, Rogosnitzky)
新型コロナウイルスに対して、セファランチンは6つのメカニズムで阻害作用を発揮することが総括されています。(2023, Sun)
セファランチンは、HIVウイルス、ヒトTリンパ球ウイルス、B型肝炎ウイルスに対して抗ウイルス効果を持つことが報告されています。(2020, Rogosnitzky)
漢方の生薬「白薬子(ビャクヤクシ)」は処方薬として処方可能な漢方薬には含まれていません。(ツムラ生薬一覧)
医薬品として処方可能です。